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光浦靖子が綴る、日用品「他人がいらない物はみんないらない」

Illustration: Mai Beppu / Edit: Masae Wako

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他人がいらない物は
みんないらない。

私のお気に入りのキッチン用品は、レンジで野菜とか蒸すときに使うふにゃふにゃした赤い入れ物。洗った野菜をぶち込んでチンするだけ。ブロッコリーも枝豆もホウレン草も、豆モヤシを入れてその上に薄い豚肉並べてチンすりゃ立派なおかずになります。

これは清水ミチコさんにもらいました。数年前、清水さんのお宅で清水さんの美味しい手料理を女芸人たちがただただ食べる、という夢のようなパーリーがちょくちょく開かれていたんです。帰りにはその残ったご馳走をお土産に持たせてくれるんです。家にあるクッキーや果物も添えてくれて。今でこそ小金持ちの集団ですが、その頃は貧乏な子も多く、みんな喜びました。

そのうち、清水さんが読み終わった本だったり、聴き終わったCDだったり、古着、家にある小物、色んな物が添えられるようになりました。で、清水さんが気づくのです。「私にはいらない物でも、他人は欲しかったりするのね。今度、いらない物交換会をしようよ」と。

ハズレは椿鬼奴さんの「実家にずーっと置いてある食器セット」でした。重い。場所を取る。正直、ダサい。全くいらない。大ハズレは、まちゃまちゃの「古い掃除機」でした。マジでボロい。汚い。捨てるのにもお金がかかる。心の底からいらない。で、第1回にしていらない物交換会は終焉を迎えました。「他人がいらない物はみんないらない」と。

ジャンケンで勝った人から選べるというルールで、私が軽けりゃなんでもいいと選んだのが、清水さん出品の、この赤いチンするやつだったんです。使ってみるとあら便利、以来、ヘビロテです。結論、「物は清水さんからもらおう!」に訂正です。

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