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堀込高樹が綴る、日用品「ちょっと持て余す、栓抜きのこと」

Illustration: Mai Beppu / Edit: Masae Wako

ちょっと持て余す、
栓抜きのこと。

雑貨屋の台所用品コーナーで目に留まって手に取った。店員に「コレなんですか」と尋ねたら「栓抜きです、そうは見えないですよね」

家族に「コレなんだと思う?」とナゾナゾを出したくて購入した。

手の平の上に載せたときの重みが好い。75㎜×60㎜。自分の手は人並みより大きめで、それでもちょっと持て余す。逆にもう少し手が小さかったら最適なサイズだったのだろうか。

買ってはみたものの、瓶ビールを飲む時くらいしか出番がない。

ビールは缶より瓶のほうが旨いと聞くが、メーカーは同じ物が入っているので差はないという。たとえ味は一緒だとしても栓を抜く行為は「さあ、楽しむぞ」と宣言するようで気持ちが揚がる。気は心ともいうから馬鹿にしたもんじゃない。

だからこそ、栓を抜く時にはシュポン! という心地よい響きを期待するのだが、この栓抜き、生憎そうはならない。ワンアクションで開栓できないからだ。始めにシュッと炭酸が抜ける音がして、それからグシグシやって、ようやく栓が開く。

家に来た客に「コレなーんだ、栓抜きだよ」と教えると「ちょっとオレに開けさせてみな」「アタシもやりたいー」と漏れなく関心を持ってくれるが、イザやらせてみると、その後は皆そろって無言である。なんか言え、コラ。家族にも不評だ。妻は「使いづらい!」とイライラ、放り投げそう。長男は「なんか、触ると手が小銭いじった後みたいな匂いがするんだけど」なんて言う。

期待値以下の使い勝手ゆえ毎度失望されている此奴を不憫に思い、僕だけがエコヒイキで登板させている。そういう形の愛着もあるということで。