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サンプリングして店を作り、DJのように本を並べる。福生の本屋〈Cha Cha Cha Books〉

書店では今日も大量の本が出入りしている。常に変わり続ける本屋の棚はどのように作られ、独自のスタイルを生み出しているのか?2024年にオープンし、出来たてほやほやの棚を持つ書店の棚作りに迫ります。

本記事は、BRUTUS「理想の本棚。」(2024年12月2日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Ryota Mukai

サンプリングして店を作り、DJのように本を並べる

階段を上り、右手には本とレコード、左手にはカフェバーのスペースが広がる〈チャチャチャブックス〉。店主はDJサモハンキンポーこと松下源さん。参加するソウルバンド、思い出野郎Aチームの活動を一時休止すると同時に店をオープン。

とはいえ、見切り発車ではない。福生(ふっさ)市などが主催する『ワークゼミ&コンテスト NEW WORKING』でこの事業をプレゼンし、グランプリ&副賞の活動資金を得たのは2023年のこと。遡って19年からは吉祥寺の古本屋〈バサラブックス〉で働きつつ、開業のために古本を収集してきたという。

店主の松下さん
カフェバーのカウンターに立つ、店主の松下さん。インテリア、内装外装はパートナーの松下紗彩さんを含め、オール福生チームで仕上げた。

「天板が移動できる棚の作りは下北沢〈本屋 B&B〉から、収まらない本は〈バサラブックス〉同様平積みに。新刊の仕入れは高松の〈本屋ルヌガンガ〉で教えてもらいました」と松下さん。

店中央のテーブルには絵本を中心に新刊が、周囲を囲む棚には古本が並ぶ。「まずは棚の左端、目線のスタート地点にどの本を置くかを決めます。タンゴ歌手の藤沢嵐子さんの名自叙伝『カンタンド』から始めてラテン、ブラジル、民族音楽へとストーリーを繋ぐイメージで。DJと同じですね」

〈流浪堂〉に学んだ、アートブックの自由な置き方

Cha Cha Cha Booksの本棚
「〈流浪堂〉の店の奥にある、アートブックの棚が見応えがあって面白いなと思ったんです。早速ワンポイントで取り入れてみたのですが、なかなか難しいですね(笑)。でも棚の見栄えが変わって面白みは増したかなと。まだまだ試行錯誤を続けます」と松下さん。いい棚に学び、よりいい棚へ。棚作りはこれからも進化を続ける。

〈バサラブックス〉で身につけた棚前の横積み

Cha Cha Cha Booksの本棚
音楽やアートの本が並ぶ棚の向かいには、店のために製作してもらったという7段×3列の棚が。劇画を中心にした漫画から日本文学、海外文学、思想哲学、歴史書、ノンフィクションの単行本と文庫が並ぶ。棚から突き出した平台には10冊ほどずつの本の山々が聳える。「棚に収まらないジャンルの本をここに。バサラ流です」

福生という土地ならではの洋雑誌と洋書のラック

Cha Cha Cha Booksの本棚
大きなソファの横には雑誌『THE NEW YORKER』やスティーヴン・キングの小説の原書『CHRISTINE』など英語の書物が並んでいる。「近所の横田基地からアメリカ人のお客さんが来てくださるんです。よくソファに座って本を眺めているので、近くにラックを設けました」と、福生ならではの本屋事情があった。
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