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長井短「優しさ告げ口委員会」:並走する人

演劇モデル、長井短さんが日常で出会った優しい人について綴る連載エッセイ、第23回。前回の「あげっぱなしの人」も読む。

text & illustration: Mijika Nagai

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並走する人

ここに行けば絶対なんとかなるっていう整体があって、そこが私の最後の砦。本当は、定期的にきちんと通った方がいいんだろうけど、大好物を最後までとっておくみたいに、その整体のことはとっておいてしまう。

仕事が一段落して、疲れ切った体を堕落し切った生活でほぐし終えた時、もう本当に私の体はめちゃくちゃって感じで、でもただの運動不足かもしれないし……だけどとにかく頭が熱い。あの整体のあいつなら、頭が熱いっていう私の体感をわかってくれるんじゃないかと期待しながら整体に向かった。

久しぶりですと笑ったあと、ゆっくり体の状態を見てくれる。調子良いねって言われたら嬉しいはずなのに、それでは少しバツが悪いっていうか、来たからにはどこか故障してないと申しわけが立たないかもなどというねじ曲がった自意識ごと、彼は施術を開始する。

長井短「優しさ告げ口委員会」:並走する人

淡々と、黙ったまま。そうして彼の手が私の頭皮に伸びた時、ポツリと「浮腫んでますね」という声が聞こえる。むくみ?!頭皮が?!驚きながらも「なんか熱いんですよね」と言うと、彼はすぐさま「熱いですこれは」と私の体感を肯定する。

私が発した「熱い」にこもった温度と、ほとんど誤差なく「熱い」と言う彼に、緊張が解けていく。良いとか悪いとか、そういう診断が人を安心させることもあるけれど、私が感じていることを、まずはそのまま受け取ってくれること。この感覚は間違ってないって、手を握ってくれること。

前を歩くんじゃなくぴたりと隣を歩くような彼の施術で、私の頭はすっきりとして、あれこれ先回りして考えすぎるのはやめようと肩の力が抜けていった。

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