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作詞家、小説家・児玉雨子の好きな器と、その付き合い方

個展に並んで手に入れた若手作家の器、旅先で一目惚れした骨董品、知人からもらった思い出深い一皿……器には、一つ一つに使い手のストーリーが詰め込まれています。カジュアルに楽しむ新世代の器好き、児玉雨子が語る、とっておきの逸品と、その使い方。

photo: Masanori Kaneshita / text: Kohei Hara

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陶芸を体験することで知った、器の自由さや繊細さ

今年の春頃に初めて陶芸教室に行って、ハマってしまいました。すごく奥深くて、行けば行くほど熱が高まっているんです。何よりも新鮮だったのが、作陶してから焼いて完成するまでの過程に約2ヵ月のスパンがあること。

普段の作詞の仕事はもっと短く、瞬間瞬間で作っていく側面があるんです。歌詞や物語そのものには形がないので作り上げたものは手で触れられない。一方の陶芸は、頭を空っぽにして一心不乱に手を動かすものなので、普段とは違うフィジカルを伴う感覚もすごく楽しいですね。

陶芸を体験してから、器を見る目も変わった気がします。制作や使用の過程で入るひびは「貫入」と呼ばれ、その変化自体を楽しむものなのだと知ったり、釉薬の塗り方や模様の繊細さにも注目するようになったりしました。最近は阿南維也(あなんこれや)という陶芸家の作品をよく見ていて、細かな作り込みに心を惹かれています。

初めての陶芸体験で作り上げたお茶碗
初めての陶芸体験で作り上げたお茶碗
日常使いができるような茶碗を制作。児玉さんが気に入っている“織部釉”という緑の釉が味わい深い。「体験してみて初めて、陶芸は自由度が高くて繊細なものだと気づきました。前回の反省を生かして次はこうしたい!と熱中しています。電動轆轤しか体験したことがないけど、いつか手びねりもやってみたい」

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