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彫刻家・コムロタカヒロの好きな器と、その付き合い方

個展に並んで手に入れた若手作家の器、旅先で一目惚れした骨董品、知人からもらった思い出深い一皿……器には、一つ一つに使い手のストーリーが詰め込まれています。カジュアルに楽しむ新世代の器好き彫刻家・コムロタカヒロが語る、とっておきの逸品と、その使い方。


本記事も掲載されている、BRUTUS「器の新時代。」は、2023年9月1日発売です!

photo: Masanori Kaneshita / text: Ikuko Hyodo

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彫刻家がなぜか作り続けてしまう、謎めいた佇まいに魅せられる

大学の後輩にあたる、横手太紀くんという彫刻家が作ったこの謎めいた壺とは、展覧会で出会いました。彼は、瓦礫の一部が浮いていたり、ゴミ袋がもぞもぞ動いていたりなど、キネティックな彫刻作品を制作するアーティスト。

モチーフはその都度変わりますが、なぜか壺は毎回登場して、彼自身も理由はわからないけれども、作り続けてしまうらしく。だから僕は、この壺を彼の肖像的なものと捉えています。

手びねりなのですが、たどたどしくうねったシェイプやメタリックな釉薬に、水面のような揺らぎを感じて、見ていて飽きないんです。存在感があるのに置き場所を選ばず、和でも洋でも馴染みそうなところも面白い。

正しい使い方なのかわからないけれど、よく花を生けています。子供が初めて描く花の絵のような、ガーベラのシンプルな形が好きなのですが、背の高い方は特に一輪すっと挿すと美しいんですよね。

横手太紀の壺「TSUBO」
横手太紀の壺「TSUBO」
横手太紀は1998年生まれ。東京藝術大学美術研究科彫刻専攻在籍。既製品の動きを使った彫刻やインスタレーションなどの制作を行う。壺の形状は作品によって異なるが、釉薬は基本的に同じ。
「一見“ユル造形”と思いきや、どの角度から見てもしっかりしていて、手に持っても気持ちがいい。やっぱり彫刻家だなって思います」

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