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古舘佑太郎、でか美ちゃんの「自分史上最高クリームパン」

仲良く家族と分け合ったり、我慢できず帰り道にたいらげたり。お気に入りのカスタードを聞けば、思い出や人となりまで見えてきます。街のパティスリーから、行きつけの洋食屋まで。カスタードに夢中な人たちに、とっておきを教えてもらいました。

photo: Kazuharu Igarashi / text: Neo Iida

古舘佑太郎
〈パオン昭月〉のクリームパン

空気ごとパフッと食べたい、甘さが絶妙なクリームパン

近くで生まれ育ったので、店の前はよく通っていました。でも昔、特に10代の頃は背伸びしたくて、行くのはおしゃれなハンバーガーショップばっかり。20代に入ってノスタルジックな店に惹かれるようになり、〈パオン昭月〉の魅力がわかってきました。

高校時代はクレープ屋でバイトしてたくらい、甘いものは大好き。でも僕の好みは少しややこしくて、菓子パンはクリームが甘すぎるとクドくて苦手なんです。その点ここのクリームパンは甘さの加減が程よくて、後味さっぱり。すごくおいしいんです。あと、これもややこしいんですけど、中身がぎっしり詰まっているより、生地とクリームの間にある程度の隙間がある方が好きで……。あのパフッとした、密閉された空気ごと食べたい。一口ごとにクリームの量が多かったり少なかったりするのが、たまらなくいいんですよねえ。

〈パオン昭月〉のクリームパン
終戦後に和菓子屋として創業し、1976年頃パン屋に。カスタードのレシピは代々受け継がれ、牛乳、卵、砂糖、薄力粉のみ。バニラビーンズは使わない。190円。
古舘佑太郎

でか美ちゃん
〈nukumuku〉のクリームパン

ぎっしりクリームパンに重ねる、母の味

お母さんが料理好きで、よくカスタードクリーム系のお菓子やパンを焼いてくれたんです。欲に任せて作るから、一回に使うクリーム量がいつも限界突破していて(笑)、パイもタルトもクリームパンも、カスタードぎっしりな食環境で育ちました。そんな思い出の味に似ているのが、〈ヌクムク〉のクリームパン。

形こそキノコみたいな独特のフォルムですけど、緩くないずしんと濃厚なカスタードの詰まり具合といい、優しい卵の風味といい、素朴で家庭的な味わいが母の味を思い出させてくれます。生地がふわふわと軟らかいところも好きで、行くと必ず買いますね。ハード系の硬いパンと交互に、アゴを休ませながら食べてます。

〈nukumuku〉の クリームパン
厳選した地養卵で作る、プリンのようなカスタードが特徴。¥230。