『The Magus』
この本は丸谷さんの書棚からいただいてきたものだ
ギリシャのスペッツェスという島でしばらく暮らしていたことがある。そのときに英国の作家ジョン・ファウルズ(『コレクター』を書いた人)が、その島で小説『魔術師(The Magus)』を執筆したことを知った。
ファウルズはそこにある私立学校で2年ばかり英語の教師をしていたのだが、教鞭をとるかたわら、その島を舞台にした長編小説を書き上げたのだ。僕が住んでいた家はその学校のすぐ近くにあったので、どんな話だろうと興味を惹かれ、アテネに行ったときにペンギン・ブックスから出ていた本を購入し、島に帰って読み始めた。
かなり分厚い本だったが、読み出すと面白くて、すらすらと最後まで読み通してしまった。主人公はファウルズ自身をモデルとした英国人の青年教師、彼は島に住む謎めいた中年の富豪と知り合い、親しく交際するようになる。そして第二次大戦中、島がナチ・ドイツに占領されていたとき、この人物がある悲劇的な事件に関わっていた事実が次第に明らかになっていく。
この本は丸谷さんの書棚からいただいてきたものだ。もともとの本はギリシャに置いてきてしまったので。