Read

Read

読む

村上春樹の私的読書案内『武装せる予言者・トロツキー 1879-1921』

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Haruki Murakami

連載一覧へ

『武装せる予言者・トロツキー 1879-1921』

トロツキーはチェ・ゲバラと並んで我々の輝かしいヒーローだった

『武装せる予言者』『武力なき予言者』『追放された予言者』の3部作。ロシアの革命家レフ・トロツキーの伝記だ。

一時期、トロツキーはチェ・ゲバラと並んで我々の輝かしいヒーローだった。当時の日本共産党は「トロツキスト」を徹底批判し、蛇蝎の如く嫌っていたが、我々乱暴な青年たちはトロツキーの長大な著作を読破した。今となってはその内容はほとんど何も覚えていないけれど。

トロツキーの本名はレフ・ブロンシュテインだが、流刑地シベリアから逃亡する際に偽名として、自分を担当する看守の名前「トロツキー」を借用した。そしてそれから死ぬまでその名前を名乗った。そのようにしてシベリアの(本来は名もなき)収容所看守の名が、歴史に轟きわたることになった。

そういえば僕は最初の小説の中で、逃亡するトロツキーと忠実なトナカイたちについて、何か適当な挿話を書いたような気がする。どんなことだったか思い出せないけど。

『武装せる予言者・トロツキー 1879-1921』アイザック・ドイッチャー/著

連載一覧へ