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村上春樹の私的読書案内『羽根むしられて ウディ・アレン短篇集』

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Haruki Murakami

『羽根むしられて ウディ・アレン短篇集』 ほか2冊

こんな離れ業は世界広しといえど、ウディ・アレンにしかできない

CBS・ソニー出版は1981年にウディ・アレンの著作を、大胆にも3冊まとめて刊行している。『羽根むしられて』『ぼくの副作用』『これでおあいこ』の3冊。へええ、ソニーって昔は自動車保険だけじゃなく、本も売っていたんだ……と若い人は驚愕されるかもしれない。

この3冊はどれも面白くて、僕は当時熱心に愛読していた。面白いものはたくさんあるが、『羽根むしられて』に収められている、「もし印象派画家が歯科医であったなら」という話と、ダシール・ハメットの見事なパロディー、超どたばたハードボイルド短編小説「コールガール組織を追え」が個人的な好みだ。

どちらも、アホらしすぎて顎が落ちるような素晴らしい出来映え。こんな離れ業は世界広しといえど、ウディ・アレンにしかできない。CBS・ソニー出版、ありがとう。よくぞやってくれました。ちゃんと売れたのかな?

『羽根むしられて ウディ・アレン短篇集』ウディ・アレン/著