『マーティン・イーデン』
「残酷なほど力強い本だ。パワフルな絶望。前向きな自滅。」
僕がジャック・ロンドンで個人的にいちばん好きな作品は、自伝的長編小説『マーティン・イーデン』だ。ローマに住んでいるときに、ペンギン・ブックス版でこの小説を読んで、とても強い感銘(あるいはショック)を受けた。長いあいだ日本語の翻訳が出ていなくて、残念に思っていたのだが、2018年に白水社からようやく新訳が刊行された。よかった。
長い小説だが、決して読者を飽きさせることがない。苦難に満ちた過酷な青春時代、小説家として身を削るように作品を書き続ける日々、そしてあまりに衝撃的な結末。読み終えたときには、なんだか世界の端っこに立たされたようなしんとした気持ちになってしまう。
「残酷なほど力強い本だ。パワフルな絶望。前向きな自滅。」というのが、僕がこの本(白水社版)の帯のために書いたコピーだ。