『よい戦争』
『アンダーグラウンド』という本でやりたかったのも、これと同じことだ。
スタッズ・ターケルの本は好きでよく読んでいるが、いちばん最初に読んだのはこの本だったかもしれない(あるいは『仕事!』だったろうか?)。
『よい戦争』の日本での発行は1985年になっている。いずれにせよ、スタッズ・ターケルの書物が僕らに提供してくれるのは、「地べたの視点」から見た歴史であり、社会であり、様々な出来事である。それらの視線(断片)が数多く集められ、積み重なり、結びついていくことによって、ものごとの全体像が次第に明らかになっていく。このような手法で作られた本は、ターケル以前には存在しなかった。
僕が『アンダーグラウンド』という本でやりたかったのも、それと同じことだ。地下鉄サリン事件の被害者たちの直接の証言を集めることで、その事件の重要な核心が必ず浮かび上がってくるはずだと信じて、作業を進めた。