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村上春樹の私的読書案内『よい戦争』

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

photo: Keisuke Fukamizu / text: Haruki Murakami

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『よい戦争』

『アンダーグラウンド』という本でやりたかったのも、これと同じことだ。

スタッズ・ターケルの本は好きでよく読んでいるが、いちばん最初に読んだのはこの本だったかもしれない(あるいは『仕事!』だったろうか?)。

『よい戦争』の日本での発行は1985年になっている。いずれにせよ、スタッズ・ターケルの書物が僕らに提供してくれるのは、「地べたの視点」から見た歴史であり、社会であり、様々な出来事である。それらの視線(断片)が数多く集められ、積み重なり、結びついていくことによって、ものごとの全体像が次第に明らかになっていく。このような手法で作られた本は、ターケル以前には存在しなかった。

僕が『アンダーグラウンド』という本でやりたかったのも、それと同じことだ。地下鉄サリン事件の被害者たちの直接の証言を集めることで、その事件の重要な核心が必ず浮かび上がってくるはずだと信じて、作業を進めた。

『よい戦争』スタッズ・ターケル/著

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