『ジャズ・レコード・ブック──キング・オリヴァーからアルバート・アイラーまで』
僕がいちばん信頼しているジャズのガイドブック
ジャズのガイドブックは山ほどあるけど、僕がいちばん信頼しているのはこの一冊だ。粟村さんは1933年生まれ、本職は医師、1960年代から70年代にかけてジャズ評論家として活動したが、1982年に筆をおき、以後沈黙を守った。しばらく前に亡くなったという話を耳にしたが、確かなことはわからない。
この『ジャズ・レコード・ブック』は学生時代、何度も何度も読み返したものだ。粟村さんの本の優れた点は、時流におもねらず、権威に媚びないところだ。自分の視点というものをひとつ持っていて、それが揺らぐことはない。また論じるジャズ・ミュージシャンの選択が素晴らしい。本書にはリー・モーガンもドナルド・バードもフレディー・ハバードも入っていないが、ボイド・レーバーンとウィリー・スミスとディッキー・ウェルズは入っている。こんなジャズ・ガイドって、まずあり得ないでしょう。そして彼ら一人ひとりに対する寸評がまた、実にぴたりと的を射ているのだ。
この本はずっと絶版になったままで、探し求めている人は多いと聞く。当然だろう。僕の本はもうぼろぼろになったけど、今でも大事に読み返している。