『Alive at the Village Vanguard』
ジャズ・ミュージシャンの素顔が、とても生き生きと描き出されている。
ロレイン・ゴードンさんはニューヨークの伝説的ジャズ・クラブ〈ヴィレッジ・ヴァンガード〉の名物女性オーナー、つい最近亡くなってしまったが、90歳を過ぎても矍鑠(かくしゃく)として、いつも店の入り口近くに座って、元気に(あるいはいかつく)客の応対にあたっていた。
僕は2009年に彼女にインタビューをしたことがある。彼女はブルーノート・レコードの創始者アルフレッド・ライオンのかつての奥さんであり、後に〈ヴィレッジ・ヴァンガード〉のオーナー、マックス・ゴードンと再婚した。だからなにしろニューヨークのジャズ・シーンの生き字引みたいな人で、いろんな面白い話を聞かせてくれた。
これは彼女の語りをバリー・シンガーが聞き書きした本で、彼女が出会ったたくさんのジャズ・ミュージシャンの素顔が、とても生き生きと描き出されている。中でも面白いのが、まったく売れなかった時代のセロニアス・モンクをなんとか売り出そうと、彼女が孤軍奮闘する様子だ。結局売り込みには失敗したのだが。