『Evening』
文章がなにしろ美しいのだ。
僕はとくにスーザン・マイノットの小説の熱心なファンというわけではないが、この本は読んでめっぽう感心した。文章がなにしろ美しいのだ。彼女は決して物語の先を急がないし、それでいて物語の流れをわずかも淀ませることはない。ミステリアスな伏線もあるけれど、それが読者を戸惑わせるようなことはない。ほんとにうまいなあ。
いつ、どこでこの本を買ったんだっけなあ、と思って書棚から引っ張り出してみたら、なんと最初のページにマイノットさんのサインが入っていた。「ハルキ・ムラカミに。ニューヨークでともにラブリーなeveningを過ごせて嬉しかった。スーザン・マイノット。1998年10月26日」とある。
そうだ、そういえば、すっかり忘れていたけど、ニューヨークの〈92ndStreet Y〉という会場で、2人共同の朗読会を開いたのだ。そのときに著書にサインをもらった。待合室で少し話をしたけれど、とても素敵な女性だったと記憶している。忘れちゃいけない。