努力だけでは到達できない
演者の魅力が滲み出た芝居を観たいから
6歳の頃に役者の仕事を始めたので、もともと映画や芸術というものにすごく興味があってこの世界に入ったわけではありませんでした。ただ、中学生になってすぐの頃に、この活動をこれからも続けていくならば自分の目指す場所がどういうものかを知る必要があると思って。
その当時は私自身、まだ映画に出演したことがなかったこともあり「映画ってどんな世界なんだろう」ってすごく考えていた時期だったと思います。
その時に観たこの作品には大きな影響を受けました。特にエヴァというキャラクターが好きで、彼女はただキッチンで踊っていたり、たばこを吸ったりしているだけでもなぜかとてもカッコいい。演じているのはエスター・バリントという人で、この映画でデビューしたのだそうです。
演技経験は浅くても、なんだか彼女の佇まいには、努力では絶対に到達できないような人間的な魅力が滲(にじ)み出ていて。その姿に惹かれて繰り返し映画を観ました。彼女に出会うまでは、芝居というものは技術を洗練させて監督に提供するものだ、という考えが頭の中にあったのだと思います。
でも芝居をしていると、その「役」を通して「自分自身」もふとカメラに映ってしまう。そう気づいてから、自分の根っこの部分をちゃんと育てようと意識するようになりました。今はまた技術を究める重要性にも立ち返っていますが、人として魅力的だと思ってもらえる自分を築こうという意識は常に忘れないでいたいです。