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プロダクトデザイナー・坂下和長。実家の工場と家屋を建て替えた、地元愛あふれるモダンハウス

朝目覚め、ベッドで日の光に包まれる。手間をかけてランチを作り、丁寧に淹れたコーヒーで小休止。家にいる時間は最高の贅沢だ。リビング、キッチン、ベッドルーム、レコードや本、家具と道具、住む場所と機能。いつもより長く家にいられるのだから、家について、ライフスタイルについて考えてみる。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Masae Wako

地域に開く場づくり

地域の人たちに愛されていた工場と、創業者の家族が暮らした木造家屋。町に馴染んでいた2つの場が、数十年の時を経て、モダンな職住一体空間に生まれ変わった。

デザイナーの坂下和長さんと家族が住んでいるのは、福岡市博多区の住宅街に立つ鉄骨造の2階建て。住居は2階で、道路に面したガラス張りの1階はプロダクトや家具が並ぶショールームだ。

和紙、モルタル、下地材
冒険のある素材使いが家を豊かにする

「ここはもともと、アルミ鋳物メーカーを営んでいる妻の実家や、その工場があった土地なんです。だから、老朽化した家屋を建て替えて僕らが暮らすことになった時、まずは地域に開けた場にしようと考えた。町の景色や人の記憶に馴染む空間をつくろうと決めました」

ショールームでそう話す坂下さんの姿を見て、道路を歩くご近所さんが手を振りながら通り過ぎる。ガラス越しでも見える内装に用いたのは、武骨な質感の木毛セメント板。わざと板の上からビス留めをし、かつてここにあった工場の雰囲気を残したそうだ。

一方の2階は、夫妻が好きなアートや長男が描いた絵を随所に飾った、家族のための空間。ここでも目を引くのは素材使いの面白さだ。リビングは幅の広いホワイトオーク材の床とモザイクタイルの壁で品よく仕上げているが、子供室の天井と壁には、ぺンキの刷毛跡みたいな模様が広がっている。

「壁紙の職人さんが下地のパテを塗っているのを見たら、その無作為な手仕事がすごく面白くて。急遽、壁紙を張るのをやめてもらってパテの跡を生かしたんです。実験的な素材使いや創造のプロセスを楽しむことは、家づくりのテーマの一つでもありました」と坂下さん。

こうして2011年に完成した室内に並んでいるのは、北欧やフランスのヴィンテージ家具から現代作家のオブジェまで、国も時代も多彩なアイテムだ。

「インテリアはセオリーで決まるものじゃないと僕は思っているんです。感覚的に好きなものを組み合わせれば、必ず合うって信じてるのかな。それに、大切に使われたものはきちんと残っていくということも、最近よく感じます。

使う人や使われる場所が変わっても、注がれた愛情は受け継がれていく。家も同じかもしれないですね」