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デザイナーが住む三角屋根のアトリエ。新しい北海道の暮らし

朝目覚め、ベッドで日の光に包まれる。手間をかけてランチを作り、丁寧に淹れたコーヒーで小休止。家にいる時間は最高の贅沢だ。リビング、キッチン、ベッドルーム、レコードや本、家具と道具、住む場所と機能。いつもより長く家にいられるのだから、家について、ライフスタイルについて考えてみる。

Photo: Tetsuya Ito / Text: Tami Okano

仕事場と暮らしの場を一つにして
家族の時間を育む

木製家具のデザインや製作を行う〈モノクラフト〉の清水徹さんは、この春、妻のセキユリヲさんと子供たちと共に、東京からここ、北海道は東川に移住した。

清水さんが東川に初めて来たのは15年以上前。家具製造を依頼していた会社が東川にあり、仕事で定期的に通ううち、東川にアトリエを持ちたいと思うようになったという。
その夢が叶ったのは今から5年ほど前のこと。知人を通じて、築50年、木造2階建ての「三角屋根」の家に巡り合った。

デザイナー・清水 徹 自宅敷地内に増設した工房 外観
敷地内にある建物は3つで、右がこの場所にもともとあった建物を改修した住まい。中央が現在建設中のアトリエ棟で左が自社工房。アトリエ棟は木造2階建て。家具のショールームと住宅のモデルハウスを兼ねる。

その見た目から通称「三角屋根」の名で親しまれてきた家は、1960年代に北海道住宅供給公社が積立分譲住宅として供給した規格型住宅。

「北海道の風景をつくってきた家でもあるし、形がシンプルで改修しやすいと思った」と清水さん。躯体以外すべて更新の全面改修を行い、アトリエとして使っていたこの家を「家族の住まい」にして移住しよう、と最初に決めたのは、ユリヲさんだった。

ユリヲさんは生活雑貨ブランド〈サルビア〉を主宰するグラフィックデザイナーで、子供との生活が始まってからは一時休業、自主保育活動に参加するなど全力で育児に取り組んできた。
そんな彼女にとって移住への大きな決め手になったのは、地域の自然学校が運営する「森のようちえん」との出会いだったという。

「アトリエ滞在中にたまたま自然学校の存在を知って、ここだ!と思ったんです。住む場所で大事なのはやっぱり、人ですね。子育てを一緒にしたいと思える人たちがいるから、住みたいと思えた。
ここで子供たちの成長とともに挑戦してみたいことがいくつもあります」とユリヲさん。仕事も徐々に再開しているが、もともと子育てを機にリモートワークへと移行していたため移住後も働き方はあまり変わらず。不便はないという。

清水さんは、家具作りの拠点と住まいが東川に集約されたことで、〈モノクラフト〉の活動にもゆとりが持てれば、と期待する。気分転換は趣味のフライフィッシング。敷地から徒歩10分の場所に、清水さんの釣り場、忠別川がある。