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フローライトはどうして光る?どうやって生成される?鉱物の基本の「き」 〜前編〜

そもそも、鉱物ってなんだろう?地球が生み出す鉱物の成り立ちから分類方法、発光する不思議な鉱物の仕組みなど。まずは知っておきたい、鉱物の基礎知識を解説します。後編を読む

illustration: Kanta Yokoyama / text: Chisa Nishinoiri

鉱物ってなに?

鉱物というのは、石を構成している一つ一つの粒です。一定の成分を持ち、原子の並びが規則的という性質を持っています。その鉱物の集合体が一般的に岩石と呼ばれるものです。そして大事なのは、天然の地質作用によってできるということ。

生き物の中で作られ、鉱物と同じ成分の物質もあります。例えば私たちの体の中でできる骨や歯といった物質は、鉱物で言うアパタイトと同じ成分でできていますが、これらは鉱物としては分類されません。

しかし、鳥のフンなどが大量に溜まる場所などで、フンの中の成分が地面の中で結晶化して有機物の結晶が生成されることがありますが、それらは鉱物に含まれます。

つまり広義に捉えると、地質作用=地面の中で生成されたものであればOKで、人工物や生き物の中で作られたものはNG。一方で、宇宙で生成される隕石や木の葉の化石なども鉱物に含まれます。ただし化石の場合はそれがかつてなんの生き物であったかの方が重要とされるので、通常は化石としてラベリングされますね。

また、鉱物に似た言葉に「鉱石」もありますが、これは工業的に使われる言葉で、人間の経済活動にとって有用な資源となる鉱物が入っていれば鉱石。入っていなければ、ただの石ころ、ということになります。

化石と鉱物のイラスト

蛍石はどうして光るの?

蛍石(フローライト)は和名の由来にもなっているように、紫外線や熱によって発光する性質を持っています。このような性質を持つ石は「蛍光鉱物」と呼ばれていますが、これも原子配列の乱れが要因といえます。

先述したように、原子配列の乱れによって光を吸収することで色の変化が起こるのですが、蛍石の場合は、紫外線を吸収する性質を持つ原子を取り入れがち。そしてその原子が、取り込んだ光を紫外線より長い波長のエネルギーとして吐き出すことで、光って見えるというわけです。

また先述の問いで、放射線の影響によって原子の配列に乱れが生じ色がつくケースも紹介しましたが、同様に、放射線によって鉱物に含まれる原子の状態が変化し、その原子が発光の要因になることもあります。

もちろん、すべての蛍石が発光するわけではありませんが、特に蛍石が多彩な色を持ち、かつ光りやすいのは原子の結びつき方の特徴といえます。

フローライト_イラスト

同じ種の鉱物でも形や色が違うのはなぜ?

同じ成分の鉱物が必ず同じ形の結晶になるわけではありません。規則性はありますが、そのルールの範囲内で色々なバリエーションが生まれます。規則とは主に原子の並び方のこと。

それぞれの結晶の面に成分が付着することで結晶は大きくなっていきますが、温度や圧力、周りの環境からどのくらいの勢いで成分が供給されるかなど、結晶ができる時の条件によって形が変わります。つまり最後に出てくる結晶面の形を調べることで、その鉱物がどのような環境で生成されたのか、多くの情報を知ることができるのです。

ちなみに理論上、サイズに限界はありません。例外的に大きくなれない鉱物もありますが、基本的に結晶はどこまででも大きくなります。

また色の違いは、わずかな成分の違いや原子の並びの乱れによって生じます。例えば緑色のペリドットはマグネシウム、ケイ素、酸素によってできていますが、マグネシウムの一部が少量の鉄に置き換わることがあり、これが緑色の要因。

また、ない色がないといわれるフローライトは、実は本来は無色透明の鉱物です。本来は規則的に並ぶべき原子が1つ欠落したり、別の位置に無理やり入ったり、そうした配置の乱れにより光が吸収され、色がついて見えることもあります。

それらが起こる要因は自然界における天然の放射線が影響しており、放射線が当たることで原子が弾き飛ばされて並びが乱れ、色の異なるものが生まれるのです。

結晶_イラスト

どうやって生成されるの?

本当に様々です。イメージしやすいのは、ドロドロに溶けたマグマが冷え固まって鉱物の結晶ができるもの。またマグマだけでなく、地中にある熱水と呼ばれる100℃を超える水の中には様々な成分が溶け込んでいるので、それらが再び析出して固まってできるもの。

温泉の源泉でよく見られる硫黄の結晶のように気体から生成されるものや、岩石が熱や圧力を受けることでじわじわと中身が変わり、別の鉱物に置き換わっていく例もあります。あるいは料理のように、別々の成分の集合体に火を通すことで均一の鉱物が生成されたり、逆にもともと1つだった成分が分離して別々の鉱物に成長するものも。

生成方法によってかかる歳月もまちまちです。地下深くではマグマが完全に冷え固まるまでに数百万〜数千万年かかるといわれていて、人間の時間スケールでは計り知れません。一方で数ヵ月から数年で生成されるパターンもあるようです。

マグマの中には無数の成分が溶け出ていて、仲の良いものとそうでないものがあります。くっつきやすい成分はすぐに結晶となって鉱物になるし、仲間を見つけるのが苦手なものは最後までマグマの中に残っていて、ようやくパートナーを見つけて結晶になって出てくるものもあります。