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ダイヤモンドより硬い鉱物は?鉱物って劣化する?鉱物の基本の「き」 〜後編〜

そもそも、鉱物ってなんだろう?地球が生み出す鉱物の成り立ちから分類方法、発光する不思議な鉱物の仕組みなど。まずは知っておきたい、鉱物の基礎知識を解説します。前編を読む

illustration: Kanta Yokoyama / text: Chisa Nishinoiri

宝石になる石とそうじゃないものの違いは?

サイエンスにおいて、宝石に関する明確な定義はありません。平たく言えば、みんなが宝石だと思えば宝石だし、違うと思えばただの石ころです。ただ、一般的にみんなが宝石だと思っているものに共通しているのが、美しさと堅牢性。

ほかにも硬度は大事な要素です。要するに、その石が美しくあり、割れたり傷ついたりしてその美しさが損なわれないことが重要なのだと思います。中には変色したり、空気中に置いておくとやがてボロボロに砕けて粉になってしまう石もあるので、美しい状態を保てるものが、宝石としては望ましいのではないでしょうか。

硬度に限って言えば、中にはモース硬度1前後の限りなく低いものが宝石として扱われていることもあります。身近なもので言うと、有機物が関係する鉱物=琥珀は硬度が2〜2.5と、決して硬い方ではありません。それでも宝石になり得るのは、傷つきやすいとわかったうえで、それでもみんなが身に着けたいと思うような魅力があるということですね。

鉱物ではありませんが真珠は良い例です。今では人工的に養殖できるようになりましたが、昔は大変に珍しいもので、あんな輝きをするものは世の中にほかにありませんでした。どんなにデリケートだとわかっていても、その珍しさ、美しさに惹かれて、人は身に着けたいと思うのでしょう。

宝石_イラスト

種を分類する基準はなんですか?

基準は2つあり、一つは化学組成=成分。もう一つは結晶構造=原子の配列です。ただ成分がまったく同じでも、ダイヤモンドとグラファイトのように原子の並び方の違いによってまったく異なる性質の鉱物になるので、原子の並び方がものすごく大事です。

ちなみに鉱物の種類は今現在、だいたい5,800種くらいあり、毎年100種以上増え続けています。それらの種がどのように決定されるかというと、新種と思われるものを発見した人は一通りのデータを揃えて国際委員会に申請書を提出する決まりになっています。

そこで各国の代表委員が中身を審査して、投票をします。そこで3分の2以上の賛成が得られると晴れて新種として認められます。審査は毎月あり、月末ごとに投票が行われ、月平均で10種ほど審議されています。

これだけ長い時間をかけて研究されているのに、実は私たちは地球のことを、まだ何も知らないということですね。ちなみに鉱物は生成された後の結果がすべて。同じ種類の鉱物でもまったく違う生まれ方をすることは結構あるので、分類においてその生成過程は問われません。

鉱物って劣化するの?

はい。そして生成の時間に比べて、劣化のスケールはやけに短いんです。極端なものでは、2、3日空気中に置いておいたり日光に当てたりするだけでダメになりますし、オーケン石と呼ばれる鉱物は水に濡れただけでアウト。

酸化、紫外線、可視光、水分は劣化の主な原因です。地球には、大地がまだなく、ドロドロに溶けていた時代があったと考えられています。それが冷え固まり、岩石ができて陸地ができたわけですが、地球の中は徐々に冷えていっています。

ダイヤモンドは地球がまだ熱かった大昔に、地球の奥深くでできた特殊なマグマに乗って地表まで運ばれたので、そのような噴火活動はもう起こらないかもしれません。この先、火山活動がなくなって地球が完全に冷え固まってしまったら、絶滅する種もあるかもしれませんね。

ダイヤモンドより硬い鉱物はないんですか?

鉱物の硬さは、軟らかい方から順に1〜10の尺度で示した「モース硬度」で表され、ダイヤモンドの硬度は10なので、地球上の鉱物の中で最も硬いといわれています。ただ、ここで言う硬さとは「引っかいた時の傷のつきにくさ」の尺度で、「叩いて壊れるかどうか」の堅牢さではないんです。

ですので、モース硬度が10のダイヤモンドであっても衝撃には弱く、ハンマーなどで叩くと意外と簡単に割れてしまいます。ちなみに理論上では、ダイヤモンドより硬い物質はあるといわれていますが、現実としてその物質が大きな結晶として存在していないので、検証は不可能。

逆に衝撃に強いのは、細かい結晶が密に絡み合っているようなもの。宝石の中で一番割れにくいのは、おそらくヒスイかネフライト。ものすごく細かい繊維状の結晶が絡み合ってできているので、ハンマーで叩いても割れません。

ダイヤモンド_イラスト