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自然との関わりを見出した、和のカリフォルニアスタイル。心象風景が育む居住空間

自分にとって心地がよく快適な場所とは、どんな空間なのだろう。気持ちのいい場所で自分のペースで過ごす時間は、何物にも代えがたいものだ。

初出:BRUTUS No.961「居住空間学2022」(2022年5月2日発売)

photo: Yoko Takahashi / text: Akihiro Furuya / edit: Kazumi Yamamoto

和への傾倒は幼い頃の心象風景だ。ベイエリア・スタイルのカフェ〈パークレット〉などを手がけるマックス・ハウゼガさんは“自然”と“食文化”を意識したクリエイティブディレクター。彼がパートナーの遠藤幸さんと暮らす住まいはモダニズムを再解釈したヴィンテージマンションにある。

「出身はカリフォルニアのサウサリートなんですけど、シカゴにいたおばあちゃんの家に和室があったんです。障子の窓に、床は畳だったかな?ベッドが2つ。なんだかとても居心地がよくて、好きでした。幸ちゃんによく言われるんです。和に魅せられたこの嗜好は潜在意識なんだと」

集合住宅には珍しく自由に切り取られた窓からは障子や曇りガラスでディフューズされた柔らかい光が注ぎ、トーンを抑えた漆喰の壁やふんだんに使われた木材の温もりが優しく満ちる。彼の心象風景に刻まれた奥ゆかしい和様式のカリフォルニアスタイルを再現したかのようだ。

「ベイエリアに育ったせいか自然の素材、とりわけ木が気持ち的にもしっくりくるんですよね。視点は違いますけど、自然との関わりの深さという点で、日本とカリフォルニアは似ていると思います」

そのせいか、装飾品は2人のオーガニックなテイストで統一されている。シャルロット・ペリアンが手がけたスキーリゾート〈レ・ザルク〉で使われたチェア。鳥取の足立商店に発注した無垢材のテーブル、建築・デザイン事務所〈DDAA〉の元木大輔さんによるベルトファニチャー、畳を無造作に積み上げた椅子。

収納代わりの茶箱(湿気に強い)や、尾道や鳥取など全国を回って集めた陶器といった旅の記憶さえ、この空間を構成する一部となっている。幸さんは心地よさをこう語る。

「旅からこの家に戻ってくると、いつも思うんです。“やさしくて明るい、この旅館も好きだ”ってね。ここは行き届いた旅館を思わせる品があるんです」

クリエイティブディレクター・マックス・ハウゼガ/東京 自宅 和空間
柔らかな和空間に置かれたパイプ椅子は、アンティークショップで見つけたペリアンがスキーリゾート用にデザインした椅子。ちなみにテーブルも同じロットで入荷したもの。