味芳斎 支店(大門)
抜群のパンチ力が真骨頂、一度食べたらやみつきに。
中国・湖南省出身のオーナーの父親のレシピを受け継ぐ麻婆豆腐は、木綿豆腐をつぶした独自のスタイル。「辛い麻婆豆腐といえば老舗のここ。肝試し的な辛さだけれど、不思議とまた足が向いてしまう」(小川)と言うように、口に入れた瞬間は少し甘味を感じるが、ボディブローのように効いてきて、深い辛さに悶絶しつつもクセになるから不思議。濃いめの味で酒の肴にも。コストパフォーマンスの高さも魅力。
痺:★★ 辛:★★★
川菜館(新御茶ノ水)
独自の香辛料に定評あり、四川の味を再現する実力派。
「少し乱暴なくらいの麻婆豆腐が四川料理らしくていい。山椒のスパイシーさが口の中に溢れ、ご飯と一緒に一気に食べたくなる」(柏原)。日本人の口に合わせるより、本場の味に近づけようと腕を振るうのは、四川省出身のシェフ。3種類をブレンドした豆板醤や自家製の山椒油など、調味料や下準備に手間暇かける。夜の食事時には皿を火で炙り、熱々状態で食べられるのも嬉しい。
痺:★★★ 辛:★★
中華銘菜 圳陽(東高円寺)
豆腐の甘味と香辛料が絶妙、ご飯と一緒に頬張りたい。
広東料理を中心にした店が手がける麻婆豆腐。オーナーシェフの四川料理好きが高じて、直接料理人から教わり考案したという。3種類をブレンドした豆板醤をはじめ、香り豊かな漢源山椒や口あたりの良い豆腐を使用するなど、研究を重ねた末に生まれた麻婆豆腐は、調味料の炒め方、調理の仕方も奇をてらうことなく、あくまでも基本に忠実。「丁寧な作りに好感が持てる。味噌のコクがご飯によく合います」(松尾)。
痺:★★ 辛:★★
中華香彩 JASMINE(広尾)
痺れの中に爽やかさを感じる漢源山椒が決め手。
本場の調味料や香辛料を使いつつ、日本人の口に合う味つけを意識している麻婆豆腐は、「品の良い軽めの味。油の質の良さが感じられ、体への負担がない」(北村)。一方で、痺れはかなりのインパクト。お好みで量を増やせる山椒は、通常のものよりも香りが強い漢源山椒を使い、シャープに痺れを感じさせる。豆腐は軟らかすぎず、モサモサしないソフト木綿を使用するなど、料理長のこだわりが細部に宿る。
痺:★★ 辛:★★
膳楽房(飯田橋)
シンプルで食後感はあっさり。辛さと痺れが名脇役の逸品。
食べ疲れしない軽やかな料理に定評がある。麻婆豆腐もしかり。油分と塩分を抑え、豆板醤もごく少量でマイルドに。豆腐に味が入ったら片栗粉で逃さず閉じ込め、風味づけのゴマ油、ラー油、花椒で仕上げる。「あんにコクがあり、豆腐のツルリとした食感が魅力」(北村)。ゴロッと入った粗挽きの豚肉と、滑らかな豆腐の食感の対比も一興。一歩引いた麻辣が後からくるのが膳楽房流。
痺:★ 辛:★
彩雲瑞(経堂)
ベーシックな味つけの中に光る肉の存在感に舌鼓!
「ラー油と花山椒、少し控えめの醤というシンプルな味つけ」(松尾)だが、全体的に辛味が強いのが特徴。特筆すべきは肉の味わいで、豚肩ロースの塊を手切りして挽き肉にしているので、確かな歯応えと旨味を堪能できる。肉と絡み合う豆腐は、絹のように軟らかい木綿を使用。大きめにカットされたネギも食感が残るほどのフレッシュさで素材を大切にする店ならではの味。
痺:★ 辛:★★
紫玉蘭(麻布十番)
意外な味の展開に驚かされる。卵が主役の変わり種。
〈中国飯店〉が手がける小菜中心のチャイニーズの名物は、赤白黄黒緑と5色ある麻婆豆腐。それぞれ味つけや具材が異なるが、中でもおすすめは黄麻婆豆腐。「ベースは塩漬け卵。意外性があっていい」(犬養)。具はエビと卵豆腐。生唐辛子の辛味、ニンニクの風味、自家製山椒油の香りと刺激が、塩漬け卵の旨味と一体に。まろやかな中に、ほんのり麻辣が感じられる新鮮な味。
痺:★ 辛:★