旅をした人:ジェローム・ワーグ(シェフ、アーティスト)
サウスマックス(森大輔):釜炊き塩
再会を約束して〈ふくどめ小牧場〉の福留さんに別れを告げると、大隅半島を一路南へ。九州最南端の佐多岬へと向かう。見えてきたのは、美しい海に張り出した高台に立つ小屋。森大輔さんが釜焚きの塩「楽塩」を作る作業場だ。
元は別の仕事に就いていた大輔さんは、この海に沈む夕日を眺めていた13年前のある日、塩作りを始めることを決意。製塩の勉強をして、地元近くの佐多岬に妻・美由紀さんと拠点を構えた。ポンプで海水を引いたら、釜に薪をくべ、5日間は昼夜問わず火を絶やさずに焚き続ける。約3トンの海水から凝縮を重ねて採れる塩はわずか90kgほど。サラサラと真白い塩を舐めて「甘味があって丸い!優しい塩ですね」とジェロームさん。大輔さんが応える。
「海水を採る場所や太陽で塩の味は変わる。海水がよく混ざるのか、大潮の日は格段に味がいい気がします」
塩はほぼすべての料理に入る料理の根幹。だからごまかしがあってはいけない、と2人の話は弾む。ジェロームさんが話す。
「塩の味は海の味。そういうふうに考えると、地球に向き合う姿勢が変わってきませんか?“食とは海に土につながっているもの”だと教えてくれる食材は、今こそ本当に求められていると感じますね」
サウスマックスの味に出会えるお店はこちら
KITADA SARUGGA(鹿屋市)
佐多岬公園観光案内所(肝属郡)