どこの店にも置いてある"朝汐"ってナニ!?
〈彩雲堂〉〈三英堂〉の記事でも登場したのが松江銘菓・朝汐。一見ただの薯蕷饅頭だが、別物。白い生地の中は皮を除いてから本炊きする「皮むきあん」。こしあんに似ているが、薄墨色~藤色で味わいも淡泊かつ品が良い。朝汐あんとも呼ばれるこの餡、ほかではとんと見ない松江ローカルあんこだ。
今や市内のほとんどの菓子舗が作り、家庭ごとに贔屓の店があるほど地元に馴染んでいる朝汐だが、生みの親ははっきりしている。松江市寺町に本店を構える〈風流堂〉2代目がその人。日本海の大波が岩肌に打ちつけ引いていく様子に譬えて名づけたとか。
「昔は皮の厚さにムラをつけ、透けて見える餡や炊いた後に足す蜜煮の粒豆を波間の岩に見立てたとか」と〈風流堂〉の内藤葉子さん。
しかし、そこからいつどうやって松江中に広まったかは謎。鷹揚な人物だったという〈風流堂〉2代目のこと、町の発展に寄与するならばと見守ったのかもしれない。