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個性的な日本の島をまとめた図鑑『しまずかん』の著者が語る離島の魅力

日本国内に約7000もあるという島。そのなかでもとりわけ個性の強い50の島を集め、キャラクターとして描いた『しまずかん』。その著者である、こにしけい、たきざわしょうたろうの2人に聞いた、日本の離島が持つ魅力とは。

photo: Jun Nakagawa / text: Rio Yamamoto

もしも、島がキャラクターになったら?

こにしけい

僕自身、大学時代に鉄骨建造物の研究で軍艦島について調べていて、その時に島自体の魅力が実はすごくあることに気づいて。廃墟マニア以外にも広く知られたらいいなと思っていたんです。軍艦島って、一つの岩礁でできていて、炭鉱として歴史的価値が高いとか、廃墟以外の見どころも伝えたくて。

たきざわしょうたろう

僕は埼玉生まれなので、最初はそんなに島に興味がなかったんだけれど、こにしに誘われて魅力にハマっていきました。何よりも他の地域とは異なった独特の文化が凝縮されているのが面白い。

こにし

サイズの大小は関係ないんです。小さな島でも個性が強いところはたくさんあります。それで、島自体をキャラクターにして興味を持ってもらうきっかけとして始めたプロジェクトが『しまずかん』でした。僕がテキストを、たきざわがイラストやデザインを担当しています。

たきざわ

掲載しているのは50島ですが、候補は150くらいあって。絞り込むのも難しかったですね。

こにし

単なる観光ガイドにしたくなかったんですよ。島によっては、戦争などの暗い歴史を持っているところもあります。事実としてどんなことがあったのかを伝えたくて。

たきざわ

島ならではの個性にフォーカスしていきたいし、あえて写真ではなくすべて絵で表現しているのも、こだわりのポイントですね。例えば、瀬戸内海にある大久野島はウサギの島として知られているけれど、過去には毒ガス工場としての一面があった。北方四島も、領土問題だけでなく、シロクマじゃないけど白いクマがいるとか。知識としてその島のことを知ってもらうことに重きを置いています。

島の特徴を見つける

たきざわ

できればいろんな島に取材に行きたいけど、交通手段や政治的な問題で足を運べない場所も多い。

こにし

だから、まずはネットで調べ、ブログなどで見つけた情報を自治体に電話をかけて確認して。そんなことを4年も続けた集大成です。

たきざわ

どうやってキャラクターとして表現するかも面白くて。瀬戸内海にある女木島(めぎじま)は「鬼ヶ島」と呼ばれているから、ちょっと怖い顔にしてみたり。滋賀県の沖島のキャラクターはビーカーに入れてみました。「自分は海の中にあると思っているけど、実は琵琶湖という湖に浮かぶ島なんだよ」とか。

こにし

まだ行けていないけれど、気になっているのが沖縄の南大東島。どうやら出荷できない裏名物の魚がいるらしく、それを食べてみたいなと(笑)。

たきざわ

パプアニューギニアから地殻変動で移動し続けている島でもあるんですよね。そんな背景もあって、南大東島のイラストには足を生やしました。ちなみに僕は種子島が気に入っていますね。とにかく遠景からの写像が美しい。エビともカニともつかない見た目のアサヒガニが特産品で。

こにし

すごくおいしいけど見た目はすごく気持ち悪いよね(笑)。でも一方で、今離島が抱えている問題は深刻。人口が減っていたり、高齢化が進んでいたり。どうにか、島を救っていくということをしたい。人がいなくなった瞬間に、文化も自然もなくなってしまいますから。だから、できれば離島の賑わいに一役買えるといいなという願いも込めて、この本を作りました。

たきざわ

今はまだ50島だけど、今後は日本全国の、今回紹介できなかった島も取り上げたいと思っています。もっと言うと『しまずかん』の中には世界の島もいくつか載せていて。第2弾、第3弾で世界にも手を伸ばせるように、すでに伏線は張ってあるんですよ(笑)。

〝離島〟をもっと知るための、著者が偏愛する島本4冊

『日本の島ガイド SHIMADAS』

『日本の島ガイド SHIMADAS』

公益財団法人日本離島センターが出版する、日本中の島にまつわるデータを掲載した書籍。「とにかく日本にあるすべての島の暮らしや名物などが余すところなく載っています」(こにし)。
日本離島センター/4,400円

『奇妙な孤島の物語』

『奇妙な孤島の物語』

世界中の孤島を紹介している本。「島の縮尺を一切変えずに紹介したり、傾斜をドットの密度で表現したりと、写真を使わない島の図鑑として、ビジュアル面で非常に参考になりました」(たきざわ)。
河出書房新社/3,245円

『1972青春軍艦島』

『1972青春軍艦島』

かつて軍艦島で働いた著者が37年ぶりに戻り、その風景を写真で切り取った。「軍艦島に置き去りにされた人形や本。そこから想像できる、人が生活していた頃の様子がわかる写真集です」(こにし)。
新宿書房/2,530円

『ニッポン 離島の祭り』

『ニッポン 離島の祭り』

日本の離島の祭りを撮影した写真集。「鹿児島の悪石島(あくせきじま)のボゼという仮面を被った祭りや、愛媛の大三島に伝わる、目に見えない精霊と戦う一人角力(ひとりずもう)など、独自の文化が垣間見えます」(たきざわ)。
グラフィック社/2,420円