多摩動物公園昆虫園(日野/東京)
自然界でも見られない世界が広がる、昆虫のユートピア。
今では全国の昆虫館で見かける蝶ドームだが、実は多摩動物公園昆虫園が発祥。〈昆虫ユートピア〉と名づけられた温室には、南西諸島に生息する種を含む10種以上、約1000匹の蝶がそこかしこを飛ぶ。亜熱帯の植物に視線を下ろすと、タイワントビナナフシやトノサマバッタの姿も。各地の昆虫が共存する姿は、この温室でしか見られない、自然界とは一線を画す生態系だ。
この園のいちばんの人気者は、自然界ではとても小さな存在のアリだ。
「葉っぱを切ってせっせと巣穴に持ち帰り、集めた葉っぱを培地に菌(キノコの仲間)を育てる習慣から、通称、“農業するアリ”と呼ばれる珍しい種です」と飼育展示係の田中陽介さんが話すハキリアリ。日本での飼育が規制される種のため、巣の中まで観察できる稀少な生態展示に大人も列をなす。
ほかにも、ベニモンオオサシガメなどの肉食の昆虫も多く、運が良ければコオロギの捕食シーンにも立ち会える。葉っぱに擬態するオオコノハムシを探そうと、親子で展示に張りつく姿も、この園では恒例。昆虫のまだ見ぬ世界が、園内の至るところに広がっている。