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ヒコロヒー「直感的社会論」:自制心なくやったツケは必ず巡ってくるもの

お笑い芸人、ヒコロヒーの連載エッセイ第33回。前回の「先日、宴会をしていた。ただただ私の話をツマミに」も読む。

text: Hiccorohee / illustration: Rina Yoshioka

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自制心なく
やったツケは
必ず巡ってくるもの。

一週間前のその日、私は仕事が終わるのが遅く、しかし一杯飲んで帰りたく、近所に住む後輩二人に声をかければ彼らも来るというので三人で集まることとなった。
「後輩」という生き物はとにかく焼肉が好きだ。本当に好きなのか、好きな雰囲気を醸し出しておくことによって「自分みたいな下等者が肉になどありつけることは普段なら不可能である」という異常な悲壮感を漂わせることに成功し、先輩という生き物の同情心や優越感を煽ることができることを知っているのかもしれない。同時に「肉切れひとつで万歳三唱する若者」としての健気さも見せつけることができるためにそれが立派な愛想となって空間を円滑に回していくことを理解しているのかもしれない。彼らが焼肉を好む内訳の真実は知らないが、とにかく彼らはいつ何時でも焼肉に狂喜乱舞する仕草を忘れない。

その日も私は小さな焼肉屋を集合場所とし、やはり彼らは「ウワア、焼肉ゥ」と、誰の為にもならない言葉を放つ。好きなもんを食えやと先輩風を吹かし、私はといえば本来の目的であるビールのみを注文する。冷えたそれだけを飲みながら肉をほおばっていく後輩たちを前にいつもの如くどうでもいい会話を繰り返していく。

数時間後、深夜一時を越えた頃、彼らが一通り肉を食べ終えた途端に私は腹が減ってきていた。深夜の判断能力など終わっている。私は私のためだけの肉を注文することとし、タン塩やハラミにカルビ、炒飯に焼きそばを後輩二人の前で全てを華麗にたいらげた。幸福な満腹感に支配されながら帰宅し、そして翌日、信じられないほどの胃もたれに襲われた。悲しいかな老いには抗(あらが)えず、それから約一週間、私は豆腐みたいな食べ物ばかりを摂取するはめになった。

なんと頭が悪すぎるのであろうか。自分の老いを把握せず自制心なくやりたい放題やるツケというのは、必ず巡ってくる。何もこんな形で巡ってこなくとも、とは思うが、それが人生なのかもしれない。全ては焼肉に大喜びし続ける後輩たちが悪い。あいつらのせいで焼肉を選ばされている。私は一刻も早くビーガンの後輩を見つけるべきである。

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