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焼いてからゆでる、唯一無二の焼きゆで餃子。静岡〈中央亭〉

日本各地で見つけた餃子専門店。メニューはほぼ餃子と飲み物という店を取材してきました。偶然にも訪れた店のほとんどが、夫婦や家族、親族で営まれていました。独りでは生み出せない継承されてきた味。しつこいようですが、餃子は愛なんです。

photo: Tetsuya Ito / text: Chisa Nishinoiri

女系家族が受け継ぐ、
お爺ちゃんの大粒餃子

中央亭(静岡)

ここ〈中央亭〉の餃子は、唯一無二と言っていいだろう。香ばしい焼き餃子でも、もっちり水餃子でも、ない。焼いてからゆでるという独自の調理法によって生み出されたそれは、ほわほわジューシーな焼きゆで餃子だ。ツンととがった角が天井を仰ぎ、餃子の既存のフォルムを覆す立体三角形を箸で持ち上げると、ずっしりと重い。

一口頬張れば、つるんと滑らかな皮の中から肉汁がドバーッと溢れ出し、大量に仕込まれているであろうキャベツの甘味がボリューム満点の肉の餡をさっぱりと包み込んでくれる。口の中には、えも言われぬ旨味と余韻が充満し、白いご飯がパクパク進む。そのレシピは戦後闇市の頃から店を始めた先々代の時代にはすでに完成されていたそうで、幼い頃から創業者である祖父母の背中を見て育った社長の友田美千代さんが、現在に引き継いでいる。

静岡〈中央亭〉餃子の皮を包む作業
厨房の奥でせっせと包む社長の妹と娘。

「祖父はもともと弁士で、好奇心も旺盛な人でした。貧しい時代、お客さんにお腹いっぱい食べてもらえる餡たっぷりの餃子を作りたい!という祖父の突飛な発想を、手先が器用だった祖母がパパパッと考えて形にしたのがこの大粒餃子です。うちは昔から、餃子は握るもの」と社長。

店は社長の3姉妹、その娘たちと娘婿が、焼き、握り、タレ作りと完全分業で切り盛り。笑顔が絶えない接客と、ここでしか味わえない餃子に魅せられ、60年以上通う常連さんがいるというのも納得だ。

静岡〈中央亭〉餃子
メニューは餃子一本勝負。大(10個)・中(8個)・小(6個)。

焼き餃子1人前8個 1,056円。(寸)7cm、(皮)普、(ヒダ)無、(具)多。