中華美食 トミーズキッチン（中目黒）
優しい味で包み込むアットホームな夫婦中華
真新しい店内とは対照的に、厨房の中華鍋は変形するほど年季が入っている。それもそのはずで、オーナーシェフの富谷宗久さんは中華一筋33年の大ベテラン。新橋〈新橋亭〉を皮切りに、六本木〈香妃園〉で17年以上。デリバリー専門店も経験し、「実店舗でお客様の顔を見ながら料理がしたい」とオープンキッチンに立つ日々だ。
「特製白湯鶏煮込みそば」古巣〈香妃園〉の代名詞でありスペシャリテ。門外不出のレシピを受け継いだ富谷さん。スープにはゼラチンが多く含まれる鶏の足を使用し、煮こごりになるまでじっくりと煮込む。麺はかん水を使わない特製麺で、よく煮込むことで味を染み込ませる。彩りの良い青菜は東京・江戸川区のシントリ菜。1,300円。 
「前菜盛り合わせ」豚肩ロースをしっとり焼き上げたチャーシュー、ミニトマトや大根等の野菜にユズの風味を効かせた甘酢漬け、豆腐干とパクチーサラダ。このほか、クラゲの冷菜、よだれ鶏などもあり。3品1,800円（単品の場合800円）。 
「麻婆豆腐」「挽き肉はあらかじめ炒めておくことでくせがなくなります。豆腐をしっかり煮込むことが大事」と、富谷さん。仕上げには香り高い山椒を効かせながら、辛さは控えめ。程よい甘味でご飯が欲しくなる味わい。大皿1,500円。
蒸し餃子やシュウマイなどの点心にスープやタレ、調味料や油までも手間を惜しまず、すべて自家製。炒め物は一度油通ししてから、丁寧にとったスープを加えて火入れ。贅沢な旨味が加わり、仕上がりは油を感じさせないあっさりとした味わいに。
麻婆豆腐は万人が好むよう辛味を抑えるだけでなく、豆豉（トウチ）を蒸して軟らかくしてから加えるなど、この一工夫が優しいと評判のおいしさにつながっている。
サービス担当は妻のいそみさん。独立にあたりファッション業界から転身し、距離感の良い接客や情報発信に力を発揮する。
