木鶏(千駄木)
確かな腕と遊び心を兼ね備える、下町の注目株。
店主の佐藤隼人さんは日本料理の名店で修業を積み、23歳で〈京橋 酛〉の料理長に抜擢。その後東京・千駄木で独立を果たし、オープンしたのがこちら。
8,000円のコースは和の正統を踏まえつつ、型にはまらない自由さが魅力だ。突き出しは「羅臼昆布や真昆布を惜しみなく、カツオ節は一番だししか使いません」と力を注ぐだし料理。茶碗蒸しやあんかけで胃袋をつかみ、続くおしのぎは引きの強い押し寿司や棒寿司を。ここで八寸やつまみを挟んで酒シフトにギアチェンジ。揚げ物や焼き物でボルテージを上げ、土鍋ごはんと甘味で締めくくる。ちゃんと手をかけて、オリジナリティも出すのだから大したものだ。
料理に寄り添う日本酒は、自ら蔵元に足を運び、面識のある造り手にこだわる。その数70種類というから、意気込みたるや。
店名の〈木鶏〉は故事に由来。木彫りの鶏のように動じず、地に足をつけて地域に根ざした店に。その思いは実を結び始めた。