大衆酒場こいさご大井町本店（大井町）
飲ん兵衛による、飲ん兵衛のための新・大衆酒場
藍色の暖簾（のれん）をくぐると、目に飛び込んでくるのは低くて長いコの字カウンター。壁には、名物料理や酒の名前を認（したた）めた半紙。「飲むぞ！食べるぞ！」という酒飲み心が掻き立てられる。
「煮込み」酒場の矜持（きょうじ）が表れると言っても過言ではない定番メニュー、煮込み。〈こいさご〉では、新鮮な豚のテッポウ（直腸）とヒモ（小腸）を、ショウガをさりげなく効かせたシンプルな塩味で煮込んでいる。308円。ほかにも煮豆腐220円、大根煮220円、卵煮110円といった味のしっかり染み込んだ煮物類が充実。 
「あじ刺し」「アジ、そしてコハダ、〆サバは、酒場の品書きに必ずあってほしい魚」と綿貫さん。ホールに立っている広岡一子さんは鮮魚の知識が豊富で、豊洲市場での仕入れと魚の仕込みは、広岡さんが担当している。385円。 
「地養鳥 チキン南蛮」信頼を置く肉屋さんから仕入れる「地養鳥」は、臭みが少なく、コクと甘味が豊か。サクッとした衣をつけて揚げ、柴漬け入りのタルタルソースと。とり天のほか、ステーキ、砂肝唐揚げなども「地養鳥」を使用。495円。
店主の綿貫和人さんは、無類の大衆酒場好き。老舗や評判の店を飲み歩くうちに「自分の店を開きたい」と思い描くように。40歳を機に、約20年間勤めた会社を辞め、ついに店を持った。
厨房を任されているのは、料理一筋20年の荒井克也さん。綿貫さんは接客、そして店の雰囲気を保つことに心を砕く。まったくの異業種からの転身と感じさせない、すっかり板についた様子は酒場通いの賜物か。「お客さんとの接し方もですが、つまみやお酒の種類が多すぎて迷う品書きや、毎日でも来てもらえる値付け、どれもいろいろなお店のいいトコどりです」
料理の盛りが控えめなのは、1人か2人でサクッと楽しんでほしいから。長っ尻は無粋、様子がいい酔客を目指したい。
