Wear

Wear

着る

インソールをオーダーメイドで。“インソール”の概念を変える〈FOOTWORKS〉

店主や定員によって語られる、商品の作りや背景、作者の物語、商品棚の構成の秘密、什器やプロップ、サイネージが織りなす空間……。店主の感性が隅々まで行き渡るそれらの店は、時として商品そのものや「〜店」の概念まで変える力がある。南青山にある、オーダーメイド・インソール専門店〈FOOTWORKS〉を訪ねた。

photo: Kiichi Fukuda / text: Mari Matsubara

中学生の頃から父親のインソール作りの手伝いを始め、その技術を継ぐこと以外考えられなかったという森 健さん。2011年に東京・下北沢に最初の店を出して独立し、現在の店を開いたのは22年10月。全面改装した130m2の大空間にバルセロナチェア、ヴィンテージのレコードプレーヤーとスピーカーがズシンと存在感を放つ。ここがオーダーメイド・インソールの店⁉

「以前は40m2ほどの小さい店でしたが、たまたま予算内でこの広さの物件が見つかり、友人と一緒に考え、施工してもらいました。もともとミース・ファン・デル・ローエやバウハウスが大好きで。シンプルで武骨な空間にしたくて、床は剥がしてモルタルを打ち、研ぎ出し仕上げの黒いカウンターを作り、収納扉はブラックミラーにしました。完全に自分の好み優先の空間です」

余裕のある空間だからこそ、長い距離を試し歩きすることができる。奥のテーブルには、森さんが設計し靴職人に製作してもらうビスポークの靴やサンダルのサンプルが、端正なシルエットで控えている。

「僕が作るインソールの効果を最大限発揮させる靴を作りたくて10年前から始めました。サンダルは、多くの人にとっていいバランスになるよう最大公約数的な考えで作られています。何十年もかけて身に染みついたお客様の癖や感覚に、僕のメソッドや哲学がいきなり受け入れられるとも限らないので、エントリーモデルと考えてもらえれば」

真っすぐ立ち、真っすぐ歩く。至極シンプルな振る舞いを追求するためのミニマルに徹した空間だ。

南青山 フットワークス 店内
コンクリート打ち放し空間に名作家具。ターンテーブルはガラード社の60年代製。アンプと映画館用スピーカーは1947年のアルテック。

栗野宏文さんが刮目した、南青山〈FOOTWORKS〉のカスタムインソール