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栗野宏文さんが刮目した、南青山〈FOOTWORKS〉のカスタムインソール

仕事柄、洋服や靴のビスポークの現場を数多く見てきた栗野宏文さん。インソールをオーダーメイドできる専門店があると聞いて興味津々。早速店を訪ねることにした。

本記事も掲載されている、BRUTUS『信頼できる店の探しかた』は、2023年4月1日発売です!

photo: Kiichi Fukuda / text: Mari Matsubara

栗野宏文

はじめまして。ここに座ればいいですか。

森健

どうぞ、お荷物を置いてください。インソールをオーダーで作るのは初めてですか?

栗野

はい。そんなお店があるなんてことも知らなかった。でも、僕は結構前から市販の中敷をいろいろ買って、靴に合わせて使い分けたりしているんです。あくまで自己流ですけれど。

これまで体の不調は?

栗野

実は過去に腰痛と坐骨神経痛でかなり辛い思いをしました。でも12年前に気功に出会ってだいぶ良くなった。内臓も肩も経絡で繋がっていて、地面に接する足裏が重要であることを身をもって知りました。だからここに来るのを楽しみにしていたんです。

今日履いてきたのは《ニューバランス990》。とても歩きやすい設計で気に入っています。サイズは9か9½。ケースバイケースでどちらかを購入して、中敷で調整したりします。

普段から足元に気を使っていらっしゃるのですね。

栗野

〈ユナイテッドアローズ〉を立ち上げた34年前に買った〈ALDEN〉のローファーがあるんですが、ヒールの外側がすり減ってしまうのを直しながら、ずっと履いています。

それでは早速ですが、足型を取らせていただきますね。このフットプリンターの上に片足を置いて、両足で立ってください。

南青山FOOTWORKS 西ドイツ製のフットプリンターに片足ずつ載せ、紙に両足の足型を取る
来店したらまず西ドイツ製のフットプリンターに片足ずつ載せ、紙に両足の足型を取る。これで足の裏にかかる体重のバランスを見る。

栗野

足を汚さずに紙の上に足型を取るんですね。これ、どこ製ですか?

西ドイツ製と書いてありますから、東西統一前のものですね。アナログな道具ですが、使いやすいので、僕は気に入って使っています。

栗野

森さんから見て僕の足型からどんなことがわかりますか?

まず右足の方に体重がより多くかかっているのがわかります。そして親指と踵の部分に濃く色がついていて真ん中がやや弱い。極端に言えば足の前と後ろがシーソーみたいな状態で、バランスを取るのがあまり得意でない足のようです。

栗野

ああ、なるほど。

あと、親指と拇指球の間に色がつかない、つまり接地していない状態が望ましいのですが、栗野さんの場合はそこに色が少しだけついていますね。ということは、進行方向に対して足がやや開いているのです。

栗野

そういうことが足型を見ればすぐわかるんですね。

いえ、実は栗野さんがお店に入られた時に立ち姿や歩く様子を見ていて、大体見当がついていました。足型を取るのは、一応その答え合わせをするようなものなのです。

栗野

そうなんですね⁉すごい。

南青山FOOTWORKS店内 顧客と会話しながらインソールを作る
GRASのランプなど、インダストリアルな雰囲気の店内で、顧客と会話しながらインソールを作る。

インソールによって足指を正しい位置に誘導

インソールを作る目的は、真っすぐ立って、真っすぐ歩ける体に導くことなんです。大抵の人は長年の癖がついてしまって足の裏に正しく体重を乗せられていません。左右の足の人差し指が平行になるように立ち、進行方向に真っすぐに足を出すのが良い歩き方なのですが、大体足が外へ開いていることが多いのです。

歩く方向に対して足がねじれていると、膝も股関節も骨盤も、さらには内臓や背骨、首まで全部ねじれてしまう。それが腰痛や偏頭痛などを引き起こすのです。

栗野

じゃあ、バレリーナのような立ち方は良くない?

歩き方としてはおすすめできません。車のタイヤが外側に逆ハの字に開いていれば、タイヤが1周回るごとにねじれて、しまいには車体が壊れてしまうでしょう。

栗野

なるほど、わかりやすいたとえですね。

しかし体にすり込まれた体重のかけ方や歩き方を自分の意識だけで変えるのはまず無理です。それを矯正してあげるツールがインソールなのです。では、先ほど取った栗野さんの足型を見ながら、実際にインソールを作っていきますね。