蕪木祐介
橋本さんは、どんな時に喫茶店で珈琲を飲むのですか。
橋本愛
“陰”の気分の時に行くことが多いですね。“陽”のエネルギーを欲するのではなくて、“陰”の気を満たしてもらいに行くというか。珈琲は、気持ちが沈み込むことを許してくれるような気がするので。
蕪木
まったく同じです。私も、弱っている時にはいつも喫茶店に逃げ込んで、一杯の珈琲に救われてきました。だから、この店では、深煎りの、まさに沈み込めるような味わいの珈琲を多くご用意しています。
橋本
(蕪木さんが珈琲を淹れている様子を眺めながら)なんだかお茶の作法を見ているようで、見入ってしまいます。ものすごくゆっくり、丁寧に淹れるんですね。

蕪木
今は少なくなりましたけれど、昔はこのようにネルドリップで淹れる珈琲屋さんが多かったのです。
橋本
なんだか、優しい。濃く、深いんですけれど、皆既日食の光みたいに包み込んでくれるような優しさ、まろやかさを感じます。先ほど、焙煎されていない生豆から見せていただいただけに、こうして目の前にやってくると余計に感動します。
珈琲と同じように、香りを味わうチョコレート

蕪木
「撫子」と「グラン・クヴァ」というチョコレートを味わっていただければと思います。
橋本
カカオ分何%ですか。
蕪木
どちらも70%で、カカオと砂糖が主成分で配合もほとんど変わりません。でも、同じカカオ豆を使えば同じ味になるかといえば、そうではなくて、作り方次第で表情が変わります。「撫子」はクリーミーで華やか、「グラン・クヴァ」は、力強くスパイシーな印象を受けると思います。口に含んで、舌の上でゆっくり溶かすと、さまざまな香りの移ろいを感じていただけるかと思います。
橋本
(チョコレートを口に含んで)今、溶かしている“旅路”の途中ですけれど、すごい!旅路にいろいろな顔や、香りが出てきますね。「グラン・クヴァ」は、ブルーチーズのような香りに出会えました。
蕪木
普段、チョコレートひとかけを、こんなふうにゆっくりと味わうことなんて、めったにないですよね。ここではチョコレートも、珈琲やお酒と同じように、香りをゆっくりと楽しんでほしいんです。
橋本
まさに、私が求めているチョコレートです!シンプルだけど、解像度が高いというか、繊細で体に染み入るようなピュアな板チョコレートが大好きなので。
蕪木
よかったです。実は、最初は、こんなシンプルなチョコレートを皆さんに召し上がっていただけるのか、心配でした。
橋本
えっ、ほんとですか?

ミニドレス649,000円、シューズ143,000円*共に予定価格(セリーヌ バイ エディ・スリマン/セリーヌ
ジャパンTEL:03-5414-1401)、ほかはスタイリスト私物