孤高を貫くスターシェフの光と影。
アメリカ料理の歴史において、カリフォルニアの〈ChezPanisse〉はとても重要な存在です。創設者のアリス・ウォータースは地産地消の食材を使い、オーガニック文化をアメリカに広めた第一人者として有名ですが、アリスとともに〈Chez Panisse〉を成功に導いたジェレマイア・タワーというシェフのことを知っている人は少ないと思います。
それは彼が馴れ合いや変化を恐れることを嫌い、料理人としての誇りを持ち続けた孤高の人だったからという理由もあります。
幼少期から裕福ではあるけれど両親の愛情に恵まれなかったジェレマイアは、誰をも惹きつける容姿を持ち、非凡な才能に溢れていましたが、作中で幼少期の彼が料理を“親友”と感じたと描かれていたように、孤独感もまたジェレマイアの人生について回るものでした。
僕はドキュメンタリーには光と影のバランス感が大切だと思っていますが、この作品に惹かれた理由もまさにそこにあります。〈Chez Panisse〉を去った本当の理由は彼にしかわかりませんが、場所や人にしがみつくと料理人は錆びてしまうという感覚は僕も常に持っていて。
ドラマティックで切なくて、素晴らしくセクシー。料理人としての人生をいかに全うするかを深く考えさせられます。
『ジェレマイア・タワー 最後のカリスマシェフ』ここがおいしい!
「トップシェフの非凡な人生に静かに高揚!」
アメリカの食文化に革新をもたらしたジェレマイア・タワーのカリスマたる所以が緻密に描かれ、彼を取り巻く人々によって語られるさまざまなエピソードがドラマティックな要素をさらに盛り上げる。