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頼りになるマンガ Vol.3:「女らしく」とか「男らしく」とか、 うるさい!

人は悩みを抱えたり困難に遭遇したりすると、藁にすがったり猫の手を借りたり、思いも寄らぬ行動に出るらしい。すがられる藁も動員される猫もいい迷惑だろうに。それならいっそ、マンガに頼ってみませんか。コンシェルジュが厳選した「頼りになるマンガ」!

Illustration: Ken Hamaguchi / Text&Edit: Keiko Kamijo, Akio Mitomi, Saki Miyahara, Kaz Yuzawa

「女らしく」とか「男らしく」とか、
うるさい!

『キミのセナカ』野原くろ/著

推薦者:トミヤマユキコ

こんなにも控えめでサイコーな胸キュンが。

いわゆるボーイ・ミーツ・ボーイの話です。主人公の高校生タケルは周囲の男子たちに合わせてアイドル写真集を回し読みしたり、好きな女子の話に参加したりしていますが、実のところ違和感を覚えています。

そこに現れたのが、転校生の公太郎。彼は柔道部所属のスポーツマンで性格も明るい。そのうえ人をジャンル分けしない、フラットな見方ができる好青年なんです。だからこそ、タケルが告白をした時も、好奇の目で見たり遠ざけたりしないで、これまで通りの付き合いができるんですよね。

「男らしさ」に縛られることなく、時間をかけて相手を愛する。そのプロセスがとても丁寧に描かれています。若いのになんて人間がデキてるんだと感動しながら読みました!

『逢沢りく』ほしよりこ/著

推薦者:SYO

決めつけられた自分像を破る少女の成長。

玉城ティナさんにインタビューした際、お気に入りに挙げていた一冊。読んで自分もドハマりしました。親や周囲の求める“いい子”を演じていた少女が、親戚に預けられたことで心境に変化が生じ始める物語。

ほし先生といえば『きょうの猫村さん』のほっこりな印象が強かったのですが、本作はヒューマニティを込めつつも、鋭利で攻撃的なテイスト。新たな環境での生活や人々との触れ合いの中で、押し付けられた鋳型から自意識がはみ出していく心情描写の見事なこと。

見るべきはその人自身であって性別ではないはずなのに、親ですら遠いという哀しみ。一方で「女らしさ」に従う方が楽に感じる自分もいて……。主人公が持つジレンマと切なる承認欲求がぐさりと刺さります。

『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』泰 三子/著

推薦者:ブルボン小林

「現場は今こう」という圧倒的な臨場感。

そんなに今、うるさいだろうか?まあとにかく、今作で描かれる警察のリアルな現場には、どんなスタンスの人も目が離せなくなる。

今作の女性達が所属する組織「警察」は完全な男社会。パトカーの座席に滲む生理の血を黒いタオルで隠し、同僚にゴリラ呼ばわりされながら、それでも共闘しなければ、庶民を悪者から守れない。男性側も、男性だけでこの世の犯罪のすべては防げないことを分かっている。

二者は遠慮のない怒声や皮肉、からかいを浴びせあいながらとにかく、ひたすらに平和を守る。彼女らのやり取りは常に笑いに満ち、サバけた様子だ。是非以前に「現場は今こう」という圧倒的な臨場感がドスンと手渡される。

『F.COMPO』北条司/著

推薦者:岩下朋世

アップデートし続ける社会を感じられる。

両親を亡くして身寄りのなくなった主人公は絶縁状態にあった母の弟夫婦に引き取られる。しかしそこは父親が生物学的には女、母親が生物学的には男、そして一見すると美少女な一子は性別不詳、そんな複雑な家庭だった……という込み入った設定で、既存の「男らしさ」や「女らしさ」に縛られない家族像を提示するホームコメディだ。

とはいえ、前世紀末に描かれた作品なので、現在の感覚からするとステレオタイプ的なジェンダー描写に感じられたり、LGBTへの偏見と見えたりするような表現もあるかもしれない。しかしこのマンガがそのように古いものに見えるとしたら、それは世の中の理解がそれだけ進んだ証拠でもある。時代の変化を実感できる点でも興味深い作品。