ウォッカ、テキーラ、ラムと並び世界四大スピリッツに数えられるジン。穀物を原料に、ジュニパーベリーと、ハーブやスパイス、フルーツなどのボタニカルによって風味づけされて造られる定番の蒸留酒だ。
発祥は17世紀のオランダと歴史は古いが、近年はボタニカルの種類や産地、製法にこだわった小規模な蒸留所が急増。“クラフトジン”として世界的なブームになっている。そのクラフトジンを700種近く扱う〈ジンバー・コパン〉のバーテンダー、ジェーニャ・マラホワさんは、その魅力をこう話す。
「原料や製法の自由度が高いので、今やジンは世界中で造られています。地域特産のボタニカルだけを組み合わせて造られるものから、コーヒー豆やマンゴー、桜の花など独特な素材を使ったものまで。個性豊かな植物が織り成す香りと複雑な味わいが最大の持ち味です」
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かく言うジェーニャさんも、クラフトジンに魅せられた一人。2003年にロシアから来日し、モデルとして活動する傍らバーに通っていた彼女。ある時バーで、47種のボタニカルを使った「モンキー 47」と出会い、ジンのイメージが一新した。
「以前もジントニックを飲んだことはありましたが、おいしさがわからず苦手意識を持っていました。でも『モンキー 47』を飲んだ時、その風味の豊かさに衝撃を受けて。当時はあまり知られていなかったクラフトジンにハマりました」
その後バーテンダーを志し、修業のため渡英。2017年当時のイギリスではすでにジンがブームだった。
「ロンドンのバーには豊富なジンが揃っていたし、専門店も軒を連ねていて。スコットランドですらスコッチよりもジンの方が飲まれていて、カルチャーショックを受けましたね」
帰国後の2018年、〈コパン〉を開店。以来国内のブームを牽引した彼女いわく、「罪悪感が少ないのも魅力」だ。
「ジュニパーベリーはかつて、胃薬やマラリアの薬にも使われていました。そうした薬にもなり得るハーブやスパイスをふんだんに使っているので、比較的気軽に楽しめます」
そして、ストレートのみならず「癖が強すぎないので、カクテルのベースとしても有能」だと言う。ジントニックなどの定番カクテルはもちろん、その展開のさせ方は多様だ。
「植物を豊富に使っているのでミクソロジーとも相性がいいし、ラムベースが一般的なモヒートもジンで作るとさっぱりした飲み口になるなどほかのスピリッツに代用しても面白い。ただいずれも、そのジン特有の豊かな香りを打ち消さず、引き立つようなアレンジを心がけています」
世界に6000種があるともいわれるジン。「色々な銘柄に挑戦してほしい」とジェーニャさんは話す。
「ジュニパーベリーの香りそのものが苦手ということでなければ、必ず好みの銘柄があるはず。それぞれの“マイジン”を見つけてほしいです」