3つのポイント
1.稀少なアート本から独立系雑誌まで揃う。
2.気鋭の建築スタジオによる建物自体も見どころ。
3.韓国作家の無料展示や芸術家のアトリエも。
「インサ」なアート図書館
先進国の中では図書館の数が少なく、利用者も減少傾向にある韓国。近年、政府や自治体はその数を増やし、利用者の増加を図っている。なかでも韓国北部に位置する議政府に2019年にオープンした〈議政府美術図書館〉は、図書館とアートギャラリーを融合させた施設として老若男女から人気だ。
ソウルの〈D&B建築デザイン〉による建物は韓国建築文化大賞で優秀賞を受賞。螺旋階段を軸に各セクションを連結した構造は本と人、知識、価値の連結を表現。開放感がありソーシャルディスタンスも確保されている。
蔵書はウィリアム・モーガンの作品集など、建築やインテリア関連の洋書をメインに、芸術専門書籍が40%を占める。国立近代美術館など国内外の美術館や、BTSのリーダー・RMからの寄贈本のような貴重な本も揃う。過去には国民的画家、ペク・ヨンスも参加した韓国作家の無料の展覧会も開催。上階には芸術家の作業場を構え、オープンスタジオの会期中は創作の様子を見学できる。
旧ソウル駅舎の〈文化駅ソウル284〉を筆頭に、韓国では行政が舵を取るプロジェクトが前衛的で「インサ」な(若者のスラングで「イケてる」)ものが多いのだが、そこには市場の小ささゆえにどの業界でも“海外で通用する”ことに照準を当てるのが当たり前という社会的な背景が。K−POPだけでない韓国カルチャーの躍進を、〈議政府美術図書館〉にも垣間見ることができるだろう。