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クリエイティブディレクター・渡邊謙治に聞いた、集合住宅を楽しむメソッド。1階だからできることがある

一軒家では体験することができないものが、集合住宅にはある。眺望、利便性、サービス……。その一方で、物件としての制約が多いのも事実。与えられた条件の中で、個性溢れる住まいをつくりあげた住まい手たちに聞いた、集合住宅を存分に楽しむためのメソッド。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Tami Okano

ギャラリーのような空間へのスケルトンリノベーション。
(福岡県/福岡市)

渡邊謙治(クリエイティブディレクター)

クリエイティブディレクターの渡邊謙治さんが住むマンションは築38年。福岡市内の中心部、大濠公園にも程近い場所にある。5年ほど前に、竣工当時の古い間取りのままの3DK、75㎡の部屋を購入し、骨組み以外を丸ごと替えるスケルトンリノベーションを行った。階数は1階。

「マンションの1階って、防犯の面では敬遠されがちなんですけど、僕は初めから1階がよかった。車が好きで、この部屋の良さは窓から車が眺められる専有の駐車場が付いていること。マンションには珍しい中庭も付いていた。都心に住めるという集合住宅ならではのメリットと、戸建てのような独立感の両方があって、ここなら思い切ったリノベーションをする甲斐がある、と思いました」

スケルトンリノベにあたり、一番思い切ったのはお風呂で、水道の配管をやり直して在来工法のバスルームに造り替えた。床はギャラリーのような雰囲気にしたくて、コンクリートむき出しの白ペンキ塗装に。配管をいじれたのも、床に防音のフローリング材を敷かなくてよかったのも、1階だからこそだ。

部屋の雰囲気は見ての通りのフレンチモダン。渡邊さんは自他共に認める「フレンチかぶれ」で特に1950年代、60年代のフランスのカルチャーに詳しい。

一番は車。そして映画と音楽。『シェルブールの雨傘』などで知られる作曲家、ミシェル・ルグランが好きで、ルグランのレコードのコレクターでもある。20年近く前から集めてきたという家具もフレンチヴィンテージの名作揃い。リビングに設けたスキップフロアの寝室も「その方が、プルーヴェっぽいっていうか、ペリアンぽいっていうか、フレンチっぽい」と渡邊さん。

迫り上げた寝室の壁は改修時に造った内壁で、実は、壁の向こうは窓。引き違いの大きな窓をあえてつぶしたというから驚く。その壁に開けた、不自然に小さな下開きのガラス戸が、アパルトマンの屋根裏部屋を思わせる。

クリエイティブディレクター渡邊謙治 自宅 ル・コルビュジエのテーブル〈LC6〉とはピエール・ガーリッシュの〈サイドシェルチェア〉
テーブルは中古で手に入れたル・コルビュジエのLC6。青と黄色の椅子はピエール・ガーリッシュのサイドシェルチェア。1960年代のアンティーク。白のペンキ仕上げの空間に家具やポスターが映える。