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スタイリスト・原由美子に聞いた、集合住宅を楽しむメソッド。日本の伝統を取り入れモダンに

一軒家では体験することができないものが、集合住宅にはある。眺望、利便性、サービス……。その一方で、物件としての制約が多いのも事実。与えられた条件の中で、個性溢れる住まいをつくりあげた住まい手たちに聞いた、集合住宅を存分に楽しむためのメソッド。

Photo: Norio Kidera / Text: Chizuru Atsuta

独立性の保たれた空間、温かな和洋折衷スタイル。
(東京都/港区)

原由美子(スタイリスト)

鎌倉の日本家屋で、服飾評論家の父親と、着物と洋装を愛する母親のもと、和洋入り交じった生活スタイルで育った原由美子さん。いわく「実家は夏の別荘用に建てられた家で、襖でつながる部屋がたくさん。すべてガラス戸でオープンで、雨戸の開け閉めも大変だったんです」。

詳しく聞けば、山の上の立派なお屋敷といった様相だが、原さん自身は「個室がしっかりとある、小さな洋館に憧れた」という。

初めての一人暮らしは、東京・乃木坂にある木造モルタルのアパート。次の家もアパートで、マンションに住んだのは3軒目から。自分で購入したこともあって、天井や2部屋をぶち抜きロフト風にして、頭上高くまで大きな本棚をつけるなど、「若気の至り」で大枚をはたいて、大胆にリノベーションをした。

現在のマンションに引っ越したのは1991年。間取りは2LDKで、8階の窓からは東京タワーを望む。玄関扉を開けてすぐの正面には、大きな布が飾られていて、季節ごとにその布を替えるのが原さんのこだわり。正月は子供用の宝尽くし文様の着物、春は桜に似た花の刺繍の入ったインドのカンタ、夏には薄手の涼しげなコットンといった具合だ。

実家では、母親がしょっちゅう床の間の掛け軸を替えたり、花を生けたりしていたこともあり、生活の中では季節感を大切にしている。

「マンション暮らしでも日本文化のいいところは取り入れたい。床の間はないけれど、布一枚で季節を感じられるかなと思って。リビングも天井が低いのでカーテンでなく、気に入った形の障子にしました」

実家を出て以来、ずっと集合住宅。なぜ好きなのかは、かつて憧れた小さな洋館のように独立性が保たれたミニマムな空間だから。

「大きな一軒家って寒いでしょう(笑)。集合住宅は他人とも近すぎず離れすぎず。構造としてはもちろんだけど、どこか人の気配があるので、住まいに温かみがあるんです」

スタイリスト 原由美子 自宅 リビング
20帖ほどの縦に長いリビングの窓には、正方形の障子を。8階の南向きなので、眺望も風通しもいい。奥には1980年代に購入したル・コルビュジエのLCソファ。ダイニングテーブルは裁断用のもの。