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世界からお届け!SDGs通信ストックホルム編。立ち入り禁止の工業用地が緑豊かな新都市へ

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はストックホルムから!

text: Miki Osako / edit: Hiroko Yabuki

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新しい技術や手段で地球環境に配慮、環境問題を学ぶ場の提供も考えた都市開発

ストックホルム近郊のNorra Djurgårdsstaden地区は、以前はガス工場があり、港湾運営に使用されていた工業エリアだ。約10年前から再開発が始まり、完成後は12,000戸の住宅と35,000のオフィスのほか、学校や地下鉄の新駅、文化施設などが建設され、環境に配慮した新都市として生まれ変わる予定だ。

多くの住宅の屋根にはソーラーパネルを設置し、自家製エネルギーでほぼすべてを賄えるようにする。すでにこの地区に実験的に建てられた住宅では、住人たちが使用するエネルギーより、ソーラーパネルにより生み出されるエネルギーが上回っているというから素晴らしい。

約100年間にわたりストックホルムの家庭や産業に届けられたガスが一時的に保管されていた円形の建物は1899年築。文化的、歴史的に価値があるため建物内を汚染洗浄し、新しい命が吹き込まれる。11階建ての劇場に改装され、市民を楽しませてくれるストックホルムの新ランドマークとなる。

また緑豊かな都市を実現させる、さまざまな緑地計画が進められている。今までに白樺、桜、桂といった31種類の木々を600本植樹。生物の多様性を高め、木々の木陰が熱波の影響を軽減させることが期待されている。

建物には屋上庭園を設置し、街には水生動物や植物の生息環境に重点を置いたマリンパークも建設。将来的には自然と環境問題の教育ツールとして利用するつもりだという。街路樹や植え込み、屋上庭園などには雨水を再利用し、土壌には保水性や通気性の改善に効果のあるバイオ炭を使用することで、広大な緑の維持のための水問題の解決にもつながる。

建設のプロセスでも有害物質を排出しない方法や再利用する方法がとられている。例えば建設現場の機械にはバイオガスを使い、トラックはEV車を使用。高炉スラグを多く含むコンクリートの使用でCO₂排出量を抑制し、開発で出る掘削材は同エリアでリサイクル。建築材としては石材や岩石を100%使用し、廃材も新技術を使うことで70%が再利用されているというから驚きだ。

街の中には児童が見学できる養蜂エリアを設け、子どもたちに学びの場をつくる。またこのような都市環境で野菜の栽培ができるのか?といった食の可能性を探るプロジェクトもスタートしている。多くの注目を浴び、ヨーロッパでも最大規模のSDGsな都市は、2030年後半完成目標だ。

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