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ブルータス編集部の本棚 Vol.5『ソウル おとなの社会見学』

ブルータス編集部には、取材でお世話になった方々から、著書や関連書籍などが届きます。その中から気になる一冊を紹介するこちらの連載。今回は、BRUTUS No.969『本当においしいドーナツ』で「韓国ソウルで起きる進化系ドーナツの“ビッグバン”」に参加してくだった、韓国在住ライター・大瀬留美子さんの書籍です。

photo: Shu Yamamoto

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『ソウル おとなの社会見学』著・大瀬留美子

『バーニング 劇場版』(監督:イ・チャンドン)で映された、ソウルタワー近くの古びたマンション。『パラサイト 半地下の家族』(監督:ポン・ジュノ)の、奥まった路地の奥にある半地下のアパートに、対照的に映される城北洞(ソンブットン)の高級住宅街、そして『はちどり』(監督:キム・ボラ)で描かれたノスタルジックな団地群。

韓国映画にチラッと映る、ソウルの街並みがたまらなく好きで、旅行に行っても、観光地よりそんな人々の生活が息づく場所ばかりに目がいってしまう私にとっては、この書籍はまさにドンピシャ。

例えば観光エリアとして有名な明洞(ミョンドン)。韓国の登録文化財第1号であるクラシックなタイル張りの韓国電力公社社屋(旧京城電気本社)、さらにはメトロホテルやYMCAなど、繁華街にも隠れた名建築や見所が多いところが、写真付きで丁寧に解説されている。
他にも、「タバンコーヒー」のような韓国特有の甘いコーヒーが飲める渋い喫茶店や、商店街、街中にある銅像などを、歴史や映画、ドラマなどを絡めながら、観光に留まらない面白さを教えてくれます。

本に出てくるのは、ソウルに詳しくない限り、もしかしたら見逃してしまうような場所ばかり。だからこそ、読み込めば読み込むほど、街が立体的に浮かび上がってくる。次に韓国に行くときには、間違いなくスーツケースに詰めたくなるような一冊です。

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