そもそもは、個人経営の小さな本屋さんが、ここ20年ぐらいでずいぶん増えたなと思ったからなんです。なかでも気になるのが、本を売る以外のテーマを持った本屋さん。LGBTQ関連だけを扱う本屋さんだったり、韓国文学だけ、猫の本だけ、とか。それぞれの本屋さんにはそれぞれの思いがあって、その根底には、彼らがテーマとすることに触れる人を少しでも増やしたい、関心を持ってもらいたい、という動機がある。
例えば、フェミニズム関連の本屋さんのお話を聞くと、普段の生活の中でずっと違和感を抱えている、でもそれは声高に主張すべきことなのかがわからない、でも生きづらい、そんなとき、そこに行けば答えが見つかる、そういう場所になっているのだと。そういうお話を聞くと、私自身も知らなかったことを知るキッカケになるし、何かを考えるヒントになるなって。
もともと私は歌手や女優のお仕事を40年近くやってきて、大きな組織の中で生きてきたんです。そこに不満や不自由を感じたことはないけれど、ちっちゃな革命を起こそうと、自分なりにはやってきたんです。で、数年前、会社を立ち上げ、自分で仲間を集めて仕事をするようになって。私自身の人格と生活と仕事が一つになったとすごく感じるんです。
それこそ、小さな本屋さんの店主の気分というか。だから、ポッドキャストの収録も私は丸腰。お相手の方も、最初は緊張していても、だんだん打ち解けてくれるし、一歩中に入った話もできる。その本がもたらすこと、もたらされたこと、その次のアクションについて、夢や希望、未来を語り合えているなって。
こういう世の中になって、気づいた人も多いと思うけど、今は「選び直す」時期だと思うんです。私もそう。私って何が好きだったっけ?って。そんなとき、本を手に取ることで、そうだ、こういうことが好きだった、こういうことを考えてたって。そこから新しい何かが始まると思うんです。