ガハハビール(東陽町/東京)
語る人:オーナー・馬場哲生
団地の日常に溶け込む“ブルー居酒屋”
居酒屋とビアパブで腕を磨いてきた店主の馬場哲生さんが「料理もビールも手作りの店」を掲げ、マンモス団地の一角でビール造りをスタート。「居酒屋に合うビールを目指し、飲みやすくデイリーに楽しめるように」と、ブロンドエールを追求。
その代表が馬場さんの名を冠した「馬場のブロンド」。ほかにモルトの力強い風味とコクが特徴の「ダンチエール」(ESB)や、ホップの苦味と香りのキレを目指した「マーシーIPA」などが定番。ホップは控えめに、モルトが香る「食いながら飲める」ビールが揃う。
両国麦酒研究所(両国/東京)
語る人:ブルーマスター・小林裕貴
〈POPEYE〉で提供する、モルトが香るビールを仕込む
70種類もの樽生が楽しめ、ビール好きにお馴染みの両国〈麦酒倶楽部 POPEYE〉。店の近くに2020年開設したこの直営ブルワリーでは、日替わりでタップに繋ぐ約20種のビールを醸造する。大学で醸造を勉強し、〈POPEYE〉が新潟で2014年に開いた〈ストレンジブルーイング〉で腕を磨いた小林裕貴さん。
「今はホップのフレーバーが重視されますが、モルトの風味こそビールの醍醐味です」。麦芽の味を引き出すべく、純水装置を用いて水質を調整し、自家培養の新鮮なビール酵母を使って発酵の安定に努めている。
RIOT BEER(祖師ヶ谷大蔵/東京)
語る人:オーナー・上地風吾
愛する音楽とサッカーを、味わいに込める
「ロクサーヌ」「ラウンド・ミッドナイツ」「ステイ・ドレッド」……。音楽好きなら、おっ⁉と気になるネーミングがずらり。
「『ステイ・ドレッド』はダビーな南国をイメージしたもさっと重めのIPA、『ラウンド・ミッドナイツ』は夏の夜に響くホーンの音色のごときスパイシーなセゾン系。個人的には地味で飲み疲れしない『ロクサーヌ』のようなイングリッシュエールが好き」と、オーナーの上地風吾さん。ボトルに冠された曲を脳内リフレインしながら味わうと、なるほど曲のイメージにピタリとはまる。
Mountain River Brewery(久我山/東京)
語る人:代表・山本孝
じっくり発酵で酵母の旨味が香るビールを
ビール好きが高じて出会ったオーナーの山本孝さんと、宮城県の〈松島ビール〉で醸造の仕事に就いていた石川涼一さんが「自分たちの好きなビールを造ろう!」と、材木店の一角でビール造りをスタート。
じっくり瓶内発酵させるセゾンやベルジャンスタイルを得意とするが、2021年はラガー造りにも挑戦している。「ラガーは低温でゆっくり発酵させています。瓶内発酵は酵母自身の出す自然な炭酸がすごく美しい。試行錯誤を繰り返して自分たちの醸造に合ったモルトの味わいを感じてもらえると嬉しいです」
CYCAD BREWING(要町/東京)
語る人:共同代表・藤浦一理
新素材を駆使して、IPAの可能性を追求する
代々木のビアパブ〈Watering Hole〉の創業者・藤浦一理さんが立ち上げた〈Snark Liquidworks〉が、2023年4月に〈CYCAD BREWING〉としてリニューアル。新メンバーを加え、IPA中心の醸造に舵を切った。
「新作『Caffer』では、日本ではポピュラーではないソーヴィニヨンブランから作られた“Phantasm”を使います」。アメリカで開催された『National Homebrew Competition』で総合優勝するなど、知識と技術を持つ藤浦さん。新素材を活用し、ホップ由来と異なるトロピカルな風味を引き出す。
KUNITACHI BREWERY(国立/東京)
語る人:醸造長・斯波克幸
旧駅舎復活とともに、国立で新しい歴史を刻みだす
国立の旧駅舎が再築された2020年、110年続く酒屋〈せきや〉がビール醸造に着手。醸造長は静岡の〈AOI BREWING〉で3年間ブルワーとして活躍した斯波克幸さん。
「一度に1,000Lと200Lのビールを醸造できる設備が整っており、伝統的なスタイルのビールを大切にしつつ、他社の醸造家とコラボしたり、実験的なビール造りにも挑戦し、個性的かつ繊細できれいな味わいを追求しています」。また北欧の限られた地域で造られ続けている、麦汁を沸騰させないRaw Aleに日本で初めて挑戦したブルワリーでもある。
INKHORN BREWING(目白/東京)
語る人:醸造責任者・中出駿
注目のブルワーが開いた都市型マイクロブルワリー
2021年6月、ファーストバッチ(初醸造)がリリースされるや、ビールファンが信頼を寄せるバーやボトルショップのタップリストに〈INKHORN BREWING〉の名が躍り出た。〈つくばブルワリー〉ほかで醸造指導などを手がけてきた中出駿さんが、満を持して開いた醸造所だ。
「学生時代の5年間を過ごしたのが、クラフトビール黎明期の米・ポートランド。大人たちが挨拶代わりにビールの話をし、ホームブルーイングも浸透していた。飲めば日本にはない味わいばかり。もともと好きだったビールが、特別なものになるのに十分な環境でした」
帰国後、一度は就職するも、休みを利用し、北米を中心としたさまざまなブルワリーを訪問。醸造はほぼ独学で学んだ。25坪のマイクロブルワリーだが「糖化や発酵時の温度管理など、自分が必要なことはストレスなく行える“ハイスペック”の設備を入れた」と話す。工事の際、機材搬入のために広く取った間口をそのまま活用し、目白通りに面した開放的なテイスティングルームに。愛好家からビールのプロ、地域の人々までが集うコミュニティスポットになっている。