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突き出た雑誌を目印に、多様なジャンルの棚を探索する。棚のいい本屋、両国〈YATO〉

本棚のことは、本のプロに聞くのが一番の近道。そこには蔵書をよりよく見せる知恵が詰まっている。ふらっと立ち寄ったお客さんを思わず惹きつけてしまう、そんな棚に出会える書店を訪れる。

photo: Jun Nakagawa / text: Ryota Mukai

突き出た雑誌を目印に、多様なジャンルの棚を探索する

奥に細長い、うなぎの寝床のような造りの店内。入口から建築、本屋の本とジャンルで固めてあることはわかるが、奥へ奥へと進むにつれて本の海に呑まれそうになる。最奥で巡り合ったのが「東京本」のコーナーだ。よく見ると『東京人』はもちろん『散歩の達人』や『RiCE』など、雑誌の“東京”特集がずらり。

東京〈YATO〉店内
「東京本」の棚。壁には川上未映子さんの著作の装画も手がける石田加奈子さんの絵が。

「棚に雑誌がささっていて面白い、と言ってくれる人もいますね」とは、店主の佐々木友紀さん。そう聞いて入口に戻れば、住宅にまつわる本の棚にささる『別冊太陽』の家特集が、本屋の本の棚の『建築知識』の美しい本屋特集が、浮き立って見えてくる。雑誌というと雑誌コーナーにあるイメージだが、こちらでは各ジャンルの目印になっているのだ。

「雑誌は最新号が出たら前の号は返品するんです。新しい情報が詰まっている分、古くなりやすいですから。でもいい本を長く売りたいし、その“本”のなかに雑誌も含まれている。だから面白いものは気合で買い取って残すようにしています。漫然と置いて棚が凸凹にならないよう、綺麗な山脈を作るよう心がけていますね」