本で得た想像力が価値観を広げてくれる
2019年頃に家族で引っ越してきたマンションの大部分を占める、本とアート作品。すべて山下さんが買い集めたもので、とにかく物量がすごい。店や倉庫にも、収まりきらないものを分散しているという。本への興味、そのルーツは小学生時代にまで遡る。
「小学2〜3年生の頃、『インディ・ジョーンズ』や『ぼくらの七日間戦争』などのノベライズを手にして以来、1日1冊ペースで本を買ってもらい、推理小説などいろいろ読み続けていました。読書が一番好きでしたね」
小学校高学年になると、祖母が住んでいた六本木の家から、〈WAVE〉や〈青山ブックセンター〉に通った。NYのグラフィティシーンを記録したマーサ・クーパーの写真集も、その頃にはすでに買っていたという。
「幼少期から何となく、そういったカルチャーに惹かれていました。今はアートブックから小説、雑誌、社会学的な本やエッセイ、食に関する本まで、何でも好きですね。最近はホラー小説にハマっています。我ながら本当に幅広く読んでいると思います」
そんな山下さんの書棚は、店のセレクトと似て、実に多ジャンルだ。
「平松洋子さんの作品など、もともと好きで読んでいたもので、店で扱っている本もかなりたくさんあります。新しく読んで面白かったものもお店に仕入れたりしていますが、仕入れのために仕事で読んでいるというよりは、好きだから読んでいる感じなんですよね」
家での仕分けは、重たいアートブックや写真集を、スチール製で丈夫なスイス製の〈USM〉の棚に。軽めの文庫や単行本を、書斎に並べて置いてある白い〈IKEA〉の棚に入れている。
「書斎の棚の前は、買ってきてまだ読んでいない本の山が積み上がってヤバいことになっていますが……。今の自分が読んでもあまりピンとこないなという本も、10年後、読んだら違って感じるかもしれない。服などは断捨離することがあっても、本や雑誌はなかなか手放せないんですよね。だから処分してしまうことはほぼありません」
本を読むのは、移動中の車内など。普段から2冊は本を持ち歩いている。
「夜中に酔っ払った状態で読んで、朝起きて何も内容を覚えていないこともありますけど(笑)。本を読むことで得てきたものは、想像力ですかね。それは写真集でも小説でも、社会学の本でもそうなんですけど、読むことによって自分の中に新しい視座が生まれる。だから、読書は面白いんだと思います」








