語る人:長谷川小二郎(編集者、記者、英日翻訳者)
Q1:何をどうしてできてるの?
ビールの主原料は水とモルト(麦芽)、ホップ。基本的な流れとしてはまず、麦を発芽させて麦芽を作る「製麦」からスタート。その麦芽を粉砕、ぬるま湯を加えて粥状にし、糖化によってデンプンを糖に分解。そこから濾(こ)し取った麦汁に、ホップを加えて煮沸することでビール特有の苦味や香りを加えていきます。ここまでが「仕込み」で、次が冷却した麦汁に酵母を加えて「発酵」させる工程。
その後「貯酒」を行って熟成させます。最後に缶や瓶、樽などの容器に詰めてようやく完成。また、日本の酒税法では麦や米、トウモロコシといった穀物などを副原料として仕込みの工程で使用することが認められています。
2018年4月に行われた法改正ではさらに麦芽使用率50%未満の発泡酒区分だけでなく、50%以上のビール区分にも果実、野菜、コーヒー、カツオ節、香辛料など新たな原料が追加されました。より多彩な味わいと香りが楽しめるビール造りが可能に。
基本はこの3つ!ビールの味を構成する原料
Q2:いろんな種類がありますが、どう違うんですか?
銘柄だけでなく、造り方で分類する方法があります。まず、発酵方法の違いで大きく3つに分類されます。使用するホップ、酵母、副原料の組み合わせやアルコール度数により細分化も可能で、最も細かく分けると150以上に。
それらは「ビアスタイル」と呼ばれ、味わいはさまざま。淡色で爽やかなピルスナーから真っ黒で味わい豊かなスタウトまで、スタイルを大まかに把握しておくと好みのビールに出会える確率が高くなります。
発酵方法の違いと日本でよく飲まれているスタイルの例
エール(上面発酵)
冷蔵技術がなかった時代から世界中で造られてきたスタイルで、15〜25℃で3〜5日かけて発酵させる。比較的華やかな味わいが特徴で、ぬるめでじっくり楽しむことも。
ラガー(下面発酵)
約10℃で長期間熟成を行うため、貯蔵を意味するドイツ語からラガーと呼ばれるように。爽やかでキレのある飲み口で19世紀以降、冷蔵技術の発達とともに世界的に普及した。
自然発酵
培養管理されたビール酵母を使用せず、醸造所の空気中や木樽に存在する野生酵母によって発酵を行うベルギー伝統の製法。ビールの原型に最も近いといえるかもしれない。
発酵中/発酵前後に果実を入れるフルーツビールも
世界の特に小規模ブルワリーで造られている。果実の状態(生か果汁かなど)、投入のタイミングにより甘さや風味、アルコール度数が左右される。近年では地元の特産など、あらゆる果実を使ったビールも豊富。
Q3:普通のビールとクラフトビールって、どう違うの?
アメリカのクラフトブルワーの定義によると、クラフトビールとは「小規模」「独立」のブルワリーが造るビール、ということになります。それを前提に全国地ビール醸造者協議会が2018年、日本のクラフトビール(ただし内容はブルワリー)の定義を発表。「小規模」の内容も「一回の仕込単位が20キロリットル以下」と具体的に示した形に。また「地域の特産品などを原料とした個性あふれるビール」であることにも触れています。
今、日本のクラフトビール醸造所の数は500以上。各ブルワーが造りたいビールを造ってきた結果、あまたの銘柄の中から好みに合ったものを探せるようになりました。小規模かつ経営が独立したブルワリーが存続できるから、この多様性があるのです。