ファッション&ビール
2つの偏愛でフリースタイルを醸す
家業の服飾販売会社を手伝うため、2018年に東京から愛媛へUターンした山之内圭太さん。学生時代にカナダで出会った、日本のものとは全く異なるクラフトビールに衝撃を受け、そのままビールを求めてアメリカに渡って旅をし、帰国後、大手消費財メーカーに就職した。経理を担当する傍ら、週末は小さなビール会社でボランティアを続けた。その後、新たにオープンする東京のブルワリー〈Y.Y.G. BREWERY〉に醸造家として転職し、ビールへの知見を広げていったのだ。
2019年5月、セレクトショップ奥に醸造所とタップバーを設(しつら)えた店舗にリニューアル。ただ家業を継ぐのではなく、自分らしさを取り入れたスタイルで新規事業にチャレンジした。ファッションとビールという異色の組み合わせだが、山之内さんにとって生活を豊かにするものが同じ空間にあることに違和感はない。
アパレルは人との繋がりを大切に、造り手の顔が見えるブランドをセレクト。ブルワリーではスタイルを固めず、様々な醸造方法でほぼ毎週新作をリリースしている。高品質を実現するため科学的根拠と柔軟な発想、そして柑橘や穀物など身近にある豊かな土地の恵みを使い、ビールの多様性を伝え続けている。
レコード&ビール
レコードショップで一杯、くらいのラフな楽しみ方を
店に入ってまず気がつくのが、約4,000枚あるという大量のLP。レコードショップと見紛うほどだ。店主の磯村良弘さんが自身の店を開くときのために約15年かけて集めてきたのだという。これらを引っ提げ、下北沢のカクテルバーを経て、現在は神泉でビアバーを営業中。
「ヘイジーIPAを飲んだのを機にクラフトビールにハマって。濁りとフルーティさに驚きましたね。下北沢の〈タップアンドグロウラー〉にも通っているうちに、次第に自分でもやりたくなって」。その気持ちは並みではなく、ビアサーバーは自身で作ったほど。IPAにセゾン、スタウトをはじめ常時約8種類を楽しめる。
バーバー&ビール
こだわりのビールとカットで貫くアメリカンスタイル
ビジネス街の地下2階にひっそり佇むカウンター5席の小さなバー。その奥には、なんと理容室が併設されている。「100年ほど前、アメリカの禁酒法時代に実在した隠れ酒場、“スピークイージー”の雰囲気に影響を受けて」と店長の柿坂宗一郎さん。
内装はシアトル出身の建築家で静岡県の〈ウエストコーストブルーイング〉を経営するバストン・デレックさんによるもの。4つのタップには〈フリーモント・ブルーイング〉はじめアメリカ産が中心に揃い、ボトルも常時10種類ほど並ぶ。スタッフはみな理容師でありながらビアバーで注ぎ方を学んだという本格派だ。飯田橋店もあり。
トレラン&ビール
トレイルランナーが各国で飲み、選んだボトルがずらり
2018年にオープンした〈Living Dead Aid by ANSWER4〉は、トレイルランニング専門店。店主の小林大允(こばやしひろまさ)さん自身、各国の大会を走破してきたアスリートであり、競技に使うアイテムを作る〈ANSWER4〉のデザイナーでもある。
「遠征先に到着したら、まずビールで乾杯。おいしいものは店に置くことも」と見せてくれたのは、アメリカの〈ファイアストーン ウォーカー〉が造るバーレーワイン。ビールをバーボンとウイスキーの樽に1年ずつ寝かせた、香り高い一本だ。2つの冷蔵庫ではアメリカ、カナダを中心に約50種類をストック。近隣の住民が酒屋代わりに使うのも納得だ。