BAR SCALA(神楽坂)
ルーツは胃薬?カクテルに欠かせないビターズを知る
「おいしくないお酒の味をなんとか変えて飲もうとした人が、父親の胃薬を足したのが、ビターズのルーツという説があります」と、オーナーバーテンダーの磯部太郎さん。そのマニアックな魅力に惹かれ、店には世界各地のビターズが並ぶ。
「リキュール同士のつなぎに使ったり、苦味を足したり、隠れた味わいを引き出したり。カクテルには欠かせない存在です」。常連客のオーダーで作ったというオリジナルの「きゅうりのカクテル」には、ロンドンの代表的な「ボブズ・ビターズ」のアボッツを使用。マンハッタンのオリジナルレシピに使われていたビターズを再現している。まずはこの一杯から、いざ奥深きビターズの世界へ。
Bar 駒草(神楽坂)
フルーツカクテルのように、季節のハーブを堪能
バックバーに並ぶ、大小のガラスの保存容器。常時20種類ほどの薬草をストックし、それらをミクソロジースタイルで提供するのが、元ホテルバーテンダーのオーナー白井秀樹さんだ。「薬草とお酒と聞くと、アブサンなどのリキュールを思い浮かべるかもしれませんが、もっと幅広い。フレッシュフルーツのカクテルの延長と考えてもらえれば」。
ローズマリーやセージ、ミントなどのグリーン系から、シナモンや鷹の爪といったスパイス系、ラベンダーやバラなどアロマティックなものまで。甘味や苦味の好みを伝えると、ぴったりの薬草を教えてくれる。注文後、すり鉢でエキスを抽出するライブ感もいい。
WunderBar Ars(小岩)
下町の新店で嗜む、芸術家たちを魅了したアブサン
専門はドイツの美術史、元高校の世界史教師である、店主の小田悠太さん。芸術家たちが愛したアブサンに惹かれこの道に入り、2023年4月に同店をオープンした。「お酒の歴史は、知れば知るほど奥深い。一杯のカクテルから、その背後にある物語も楽しんでもらえたら」。
アブサンは20種類ほどが揃っており、シグネチャーはイギリスの古典的カクテルレシピ本『サヴォイ・カクテルブック』の「コープス・リバイバー No.2」に、グラッパを加えた強烈なショートカクテル。ほかにもドイツ、オーストリア周辺の酒を多く集めている。ゆっくりと飲みながら、壁一面の本に囲まれる時間も、ここならでは。
Flying Bumblebee(代官山)
最初の一歩になり得るバーは、薬草酒の入口でもある
地下とは思えない高い天井の空間に、大きなアイランドカウンターが1つ。店に立つのは、恵比寿の有名店〈Bar TRENCH〉時代に海外コンペティションに出場経験もある五十嵐愛さんだ。バーに通い慣れない人にも、マニアにも楽しんでもらいたいとの思いから、日々スタンダードなものから、薬草酒などの約30種のニッチなリキュールを使ったカクテルまでを取り揃える。
「特におすすめしたいのは、先輩の元バーテンダーが作っている〈伊勢屋酒造〉のアマーロベースのネグローニ。ハーブ感のある苦味と熟成した甘味の、間を取った絶妙な味わいです」。グラスに浮かぶ、バラを模した氷もひときわ華やかだ。