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世界一の鉱物コレクター、ビル・ラーソン・コレクション〜前編〜

自他共に認める世界一のミネラルコレクター、ビル・ラーソン。鉱山を所有し採掘だってお手のもの。70年以上かけて集めたコレクションは、度肝を抜くものばかりだ。ここでは彼の収集史と併せて、そのごく一部を紹介!

本記事も掲載されている、BRUTUS特別編集「合本 珍奇鉱物」は、2023年12月5日発売です!

photo&text: Aya Muto

Awesome Mineral Collection

「このファイアを見て!」と白色のオパールを手に取り、照明にかざすビル・ラーソンさん。手の動きとともに、緑から紫、そしてオレンジ色へと遊色効果が見られるこの標本は、くぐもった白によって輝きが抑えられ、なんとも上品な優美さを誇っている。

メキシコ産オパール
100年以上前に採掘されたメキシコ産オパール。ビルさんの個人コレクションには、もともとミュージアムに収蔵されていた標本もたくさん見られ、このオパールもそのうちの一つ。

「1908年にアメリカ自然史博物館に持ち込まれた標本で、メキシコ産のオパールとしてはかなり巨大。母岩も美しいでしょう?」。その声からは純粋な興奮が聞き取れる。鉱物・宝石商〈Pala International〉を営むビルさんはいかにして、世界一のコレクターと呼ばれるようになったのか。鉱物に目覚めたのは6歳の頃だと語る。

「まだミネソタに暮らしていた頃、近くのミネトンカ湖の周りでメノウを見つけ割ってみると、小さなクリスタルが出てきたんです。それが太陽の光に当たって輝く姿を見て、おー!と、夢中になったのが始まりでした。父の仕事でカリフォルニアへ移住すると、20世紀初頭にトルマリンをたくさん産出した鉱山帯が近くにあったんです。父の助けもあり、8歳の時に鉱山の廃棄所から黒いトルマリンなどを見つけ出し、さらに石の魅力にのめり込んでいきました」

テネシー州のカルサイト、アリゾナ州のマラカイト、スペインのフローライト
玄関でいきなり巨大な標本たちがお出迎え。米・テネシー州のカルサイト(左)、アリゾナ州のマラカイト(中)、スペインのフローライト(右)。